甲子園で「応援に回る」球児が五輪で輝く未来 野球部から「タレント発掘」身体能力に期待大

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代表例は、2012年ロンドン五輪、2016年リオ五輪の女子ボート金メダリストとなった英国のヘレン・グローバー選手。1986年生まれのグローバー選手は、2008年までは陸上競技(クロスカントリー)の選手だったが、同国の長身者を対象にしたタレント発掘プログラム「Sporting Giants(スポーティング・ジャイアンツ)」によって、ボート選手としての適性を見出された。

このタレント発掘プログラムは、男子が身長190センチメートル以上、女子は身長180センチメートル以上を目安にしていて、グローバー選手は身長178センチメートル。ボート競技は背が高くて腕が長い人の場合、1回こぐたびに、オールをより大きく動かすことができるので競技適性が高いのだ。

グローバー選手は、成人後に新たな競技に挑戦してわずか4年で、自国開催の五輪で金メダリストになった。この快挙はまさに英国のタレント発掘事業の成功を象徴するものだ。

このようにタレント発掘は、オリンピック・パラリンピックの開催国を中心にして、メダル獲得のための強化策として戦略的に行われてきた。

すでに日本でも動いていた「タレント発掘」

スポーツ庁の「鈴木プラン」は大きな注目を集めたが、実はそれに先立ち、ずいぶん前からいくつかの自治体でタレント発掘の取り組みが始まっている。その1つが東京都だ。東京都は東京五輪の開催が決まる前の2009年度から、中学生を対象としたタレント発掘・育成プログラムの「トップアスリート発掘・育成事業」を実施している。

東京都のタレント発掘は、中学生を対象にボート、ボクシング、レスリング、ウエイトリフティング、自転車、カヌー、アーチェリーの7競技の選手を発掘するプログラムである。

この事業では、毎年、30人程度の中学生を発掘。東京都が育成対象とするアスリートとして、これまでに第1期生から第7期生の186人を認定した。事業を開始した2009年度に発掘した第1期生は、現在、大学3年生になっているが、多くの修了生はインターハイや国体といった国内最高峰の大会だけではなく、年代別の日本代表に選ばれて世界大会でも活躍している。

現在、これらの競技で世界大会に出場している選手たちも、少し前の中学生時代には、部活動でバレーボール、陸上競技、サッカーなどをやっていた選手である。

新たな競技と出合って、数年から5、6年で世界に出ていくのだから、その潜在能力の豊かさには驚くばかりだ。

また、東京都は、新たな試みとして、2015年度からパラリンピック選手の発掘も進めている。発掘プログラムの参加者の中には、競技団体の指導者から見込まれた選手も多く、実際に競技団体の練習会に参加するなど、本格的にパラリンピックを目指す選手も出始めている。(東京都 パラリンピック選手発掘プログラム

筆者が勤務する三菱総合研究所は、東京都のオリンピック版、パラリンピック版両方の発掘プログラムの運営支援業務を受託しており、私も事業開始当初からこの取り組みにかかわってきた。その経験から、スポーツ庁の「鈴木プラン」によるタレント発掘でも大きなポイントになるのは、「戦略的なターゲット設定」と「充実した育成環境」を実現できるかだと考えている。

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