誰も降りない「秘境駅」を存続させる町の狙い 維持費を負担してでも残したいワケは
小幌駅の存続に必要な維持管理費は10年間で約3000万円と、北海道の小さな町にとっては安くない額。町内でも「本来JRの仕事なのに税金を投入してまで肩代わりする必要があるのか」などの反対意見もあったという。
「議会でも全員が賛成ではなかったですからね。でも、結果として小幌駅を残すという判断が話題になって、豊浦町を全国に知ってもらうことができた。秘境駅を残すという姿勢を応援してくれる人もたくさんいた。ある程度の効果はあったんじゃないかと思います」(小川副町長)
一方、幌延町では2014年度から、糠南駅などの秘境駅を町おこしに活用すべく検討を進めてきたという。
「うまくいけば地域経済にメリットがあるかもしれないと、鉄道ファンの方々がどの時期にどこから糠南駅に来ているのか、きちんと調べてみようということになったんです。(観光資源としての価値や可能性を把握する目的で)秘境駅グッズの携帯クリーナーを町役場と問寒別出張所で発売したところ、平日の日中しか買えないにもかかわらず好評でした。そこで、これらの秘境駅をなんとか町おこし、地域振興に活用できないかと考えたんです」(幌延町産業振興課・山下智昭さん)
「鉄道による町おこし」へ
幌延町は、2015年度には地方創生交付金を活用して調査やイベントの運営などを行い、同町の「まち・ひと・しごと創生総合戦略」にも「鉄道による町おこしで交流人口を獲得する」と明記した。いよいよ具体的な取り組みをスタートさせようというところで、2016年夏にJR北海道側から駅廃止の話が出たため、町費でこれら3駅を維持することを決めたというわけだ。
「JRさんのスタンスとしては、日常的な利用がほぼないから廃止する、ということです。でも、我々としては駅を拠点に観光をやっていきたい。そして将来的に見ても利便性の低下によって、移住したいという人の芽を摘んでしまう可能性がある。この2点が駅を存続させた理由です」(山下さん)
豊浦町にしても幌延町にしても、財政的にそれほど豊かではないところで“秘境駅”への町費の投入という英断。鉄道ファンとしては喝采を送りたいところだ。だが、話はそれほど単純ではない。小幌駅にしても糠南駅をはじめとする幌延町の秘境3駅にしても、地元住民の利用はほぼゼロ。駅を存続させても、地元住民にとってただちにプラスの効果が生まれるわけではない。
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