誰も降りない「秘境駅」を存続させる町の狙い 維持費を負担してでも残したいワケは
そうした中で町費を投入するのだから、例えば訪れた人たちが町内に宿泊したり飲食したりするなどの“経済効果”が求められる。駅を目当てに訪れる鉄道ファンは、往々にして駅とその近くを散策するくらいで去っていく。“秘境駅”だけに、駅の近くには観光施設も商店もないわけで「秘境駅をどうやって町全体の観光促進につなげていくのかが最大の課題」(小川副町長)というわけだ。
「特に小幌駅は一般道からアクセスできず、来訪するには鉄道しかない。そして鉄道で去っていく。豊浦町には来ても町の中心には寄らずに帰ってしまう。小幌駅の魅力はトンネルに挟まれた山中にあり、駅以外は自然しかないところですから、駅前にお土産屋さんを建てるわけにもいかないですし……。林道や海からのアプローチを含めて考えていく必要があります」(小川副町長)
「秘境駅ということでたくさんの人に来ていただけている今の状況、これが長続きする可能性は少ないのかなと思っています。ですから、息の長い経済性、生産性につなげていくことが目標です。そのためには今のうちに地域の魅力を掘り起こしていかないとダメ。秘境駅目当てに一度来た人がもう一度来たいと思えるような仕組み、まちづくりをすることが大事になりますね」(山下さん)
近隣には観光資源があるものの……
豊浦・幌延両町に共通するのは、近隣に有名な観光地があるということ。豊浦町の隣町・洞爺湖町にはサミットが行われたことでもおなじみの洞爺湖や有珠山があり、今も国内外から多くの観光客が訪れる。幌延町もサロベツ原野という観光地を持ち、隣接する豊富町がサロベツ観光の促進に力を入れている。ただ、こうした一大観光地の影に隠れ、両町は目玉となる観光資源を持っていないのだ。
幌延町の山下さんは「うちの町の観光というと、月並みなんですが“何もない”ということになってしまう。トナカイの観光牧場やヒマラヤ高地に咲いている青いケシなどを売り出していますが、これらは外から持ってきたものですし……」と悩みを吐露する。
幌延町の基幹産業は酪農業。ただ、酪農は加工して製品化されてはじめて商品となる。一般的な酪農農家では、生産するだけで終わりで、加工や流通などは行っていないため、「わが町で獲れた牛乳」としてブランド化することはなかなか難しいのだという。もちろんバブル期のように箱モノを建てて観光拠点を作ることも非現実的だ。
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