ネット通販の激増で日本の宅配便は崩壊する 2割占める「再配達」を宅配ボックスで減らせ

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消費者がモノを買うにあたり、つねに考えているのが”購買コスト”だ。商品を購入するために要する費用であり、店に行くための交通費や移動時間、持ち帰りのための労力も含めた、トータルのコストである。リアル店舗で購入するかネット通販で購入するかは、こうした要素の削減も含めた購買コストを判断材料に、メリットとデメリットを比較している。

ネット通販を選ぶうえで重視されるのは、何といっても時間コストである。小さな子どものいる主婦や、仕事で帰宅の遅い単身者にとっては、時間の制約がどうしても大きい。とはいえ、時間帯指定にしたとしても「2時間」という幅があり、その間は自宅で待っていなければならない。到着を待ちきれずに出かければ、再配達となり、利用者にも宅配便会社にも販売業者にも、新たな負担となってしまう。

カギを握るのは宅配ボックスの普及

この時間コストを解決する方策で今、注目されているのが、商品を受け取るピックアップポイントの活用だ。マンションだけでなく、コンビニエンスストアや駅などに、「宅配ボックス」を設置する動きが広がっている。非対面でピックアップできる宅配ボックスが全国に普及すれば、利用者は自分の都合で商品を受け取ることが可能で、時間コストを削減できる。同時に宅配便会社にとっても再配達コストの削減になる。

日本の宅配便は世界的にも最高レベルといっていい。しかしそれも、ドライバー不足や物量拡大、サービスの高度化などを受け、持続できなくなりつつある。利用者、販売業者、宅配便会社にとって、何が望ましい形なのか。このまま手を打たなければ、日本の物流は間違いなくパンクする。

森田 富士夫 物流ジャーナリスト

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もりた・ふじお / Fujio Morita

1949年生まれ。物流業界を専門に長年取材・執筆を行う。主な著書に『トラック運送企業の働き方改革〜人材と原資確保へのヒント〜』(白桃書房)。

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