「町内会」の担い手がますます減りそうな理由 行政の仕事や責任が安上がりに「下請け」に
もっとはっきり言えば、「住民主体の課題解決力強化」というのは、行政がカネもヒトもできるだけ手を引いて、ていよく住民自身が安上がりにやってくれないかなあ、という行政側の「願望」ではないでしょうか。
その結果、行政がしていた仕事が町内会に「下請け」に出される流れがますます強まるおそれがあります。
町内会などが介護保険の「下請け」?
その流れを先取りするかのような話が、介護保険の「総合事業」(介護予防・日常生活支援総合事業)です。
これまで介護保険の中で比較的軽い「要支援」の人たちが受けていたサービスの一部が、ヘルパーでなくてもできるようになります。ゴミ出し、家事、見守りなどは介護事業所ではなく、「地域住民主体」つまり町内会のようなところでもできるというわけです。
ところが、この「総合事業」への移行は、2017年4月が期限なのですが、厚労省調査では2016年4月の段階で、移行がゼロ自治体(保険者)の府県が7つもあります。20市町がある佐賀県もゼロ。「住民主体でごみ出しや見守りなどきめ細かなニーズに対応したり、利用料を下げたりする新サービスを提供できるのは、7市町にとどまる見通しだ」(西日本新聞2017年2月9日付)。
福岡市は、住民主体サービスについては「実施しない」としていますが、「従来の7割程度まで報酬を下げた上で、介護事業所による新サービスを提供する」(同)ことにしたために、議会で問題に。議員から「ある市内のホームヘルプ事業を行っている事業所では、年間で1200万円もの減収になると言われている。小さな事業所などはこれで閉鎖せざるを得なくなる」と告発され、追及を受けています(同2016年12月16日付)。
厚生労働省が音頭をとって、町内会をはじめとする「住民主体」の受け皿をつくろうとしたもののうまくいかず、報酬単価を切り下げて従来の介護事業所にやらせようとした自治体では、そのしわ寄せが介護事業所に押しつけられているのです。
「住民主体の地域の課題解決力アップ!」――そんな美名の下に、行政の仕事や責任が安上がりに「下請け」に出されています。町内会や地域団体の負担がますます重くなり、そのせいで、いよいよ抱えた仕事に押しつぶされ、後継の担い手が育たないという悪循環に、はまり込んでいないでしょうか。
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