日米の「対中姿勢」には深刻な温度差がある トランプ政権は米中融和を目指す可能性

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安倍首相は会見で、「東シナ海、南シナ海、インド洋、いずれの場所であろうとも、航行の自由をはじめ、法の支配に基づく国際秩序が貫徹されなければならない」と述べ、中国の海洋進出を暗に批判した。

ところが、トランプ大統領は会見終了間際に、産経新聞の記者から対中認識を問われると、中国との対話路線の意義を強調した。

トランプ大統領は「中国国家主席との昨日の電話会談はとても、とても温かい会話となった。私たちはうまくやっていく過程にあると思う。それは日本にとっても利益になるだろう」と指摘。さらに、「私たちは中国のさまざまな代表者たちと対話をしている。このことはすべて、中国と日本、米国、そして、地域のあらゆるものにとっていい結果を生むことになると私は信じている」と述べた。

このときのトランプ大統領の隣にいた安倍首相の様子について、12日付の朝日新聞朝刊の記事は「首相にしてみれば、はしごを外されかねない展開と言えるだけに、トランプ氏の隣で落ち着かない様子を見せた」と述べた。

トランプ大統領は就任前に「1つの中国」問題で中国に強硬姿勢を見せていた。それが一転し、記者会見では中国への融和的な姿勢を見せた。トランプ政権の対中政策ははたしてどこに向かうのか。

トランプ政権は米中融和を目指す?

トランプ政権内には、新設されたホワイトハウス国家通商会議(NTC)のトップのピーター・ナヴァロ大統領補佐官や、NTCで防衛産業基盤担当の副長官への起用が予定されるアレックス・グレイ氏など対中強硬派が目立つ。

しかし、その一方で、中国との関係改善を図ったキッシンジャー元国務長官のかつての側近、キャスリーン・マクファーランド大統領副補佐官や、次期駐中国大使に起用されたアイオワ州知事のテリー・ブランスタッド氏といった親中派もいる。トランプ大統領は、選挙中からキッシンジャー氏とたびたび会談してきたことから、キッシンジャー外交戦略を受け継ぎ、米中融和を目指すのではないかとの見方もある。

慶応義塾大学総合政策学部の神保謙准教授は、アジア太平洋の安全保障にとってよくないシナリオの1つとして、トランプ政権が日本といった同盟国の頭越しに、中国や北朝鮮とグランドバーゲン(壮大な取り決め)をしてしまうリスクを挙げる。「こうしたグランドバーゲンが、たとえば日本やフィリピンといった国々が抱える原則的な主権や法の支配といった問題に反する形で行われるとすれば、日米同盟や米比同盟に大きな亀裂が入ることは間違いない」と神保准教授は指摘する。

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