日米の「対中姿勢」には深刻な温度差がある トランプ政権は米中融和を目指す可能性

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米コロンビア大名誉教授のジェラルド・カーティス氏は9日付の朝日新聞朝刊のインタビュー記事の中で、「日本はあまり中国脅威論に傾かない方がいい。トランプ氏は中国との取引がうまくいけば、米中関係を改善させる可能性もある」と指摘している。

では、日本と中国が関係を改善させるためにはどうすればいいのか。日中では近年、東シナ海と南シナ海をめぐって、エスカレーションゲームが進行している。日中はまずそれを認識する必要がありそうだ。

日中が取りつかれる「両海連動」の考え

そのエスカレーションゲームとは、次のようなものだ。昨年7月にオランダ・ハーグ仲裁裁判所が出した南シナ海での中国の領有権を否定した判決を日本が支持すると、中国は対抗措置として、南シナ海と東シナ海を連動させる「両海連動」の考えの下、東シナ海の尖閣周辺に公船を送り込むようになった。その一方、日本は中国が尖閣周辺に公船や軍艦を送り込むと、その予防策として、さらに南シナ海問題での介入を強めるという悪循環が発生している。日本も中国も東シナ海と南シナ海を連動させて考えているわけである。

この負のスパイラルをどのように断ち切ればいいのか。

元防衛相で拓殖大学総長の森本敏氏は2月7日夜のBSフジ番組「プライムニュース」で、米軍の「航行の自由作戦」への自衛隊の参加など、南シナ海で中国を挑発するような活動を日本がすべきではないと訴えた。

森本氏は、「(日本が)行動を伴うような活動を南シナ海で行うと、中国が東シナ海の尖閣諸島領海の中にそれを理由に入ってくる。それはいたずらに中国を挑発する。これはやってはいけない」と指摘した。

さらに「日本の安全保障上のプライオリティは東シナ海であって南シナ海ではない。南シナ海には確かに重要な海上輸送路があるが、南シナ海で中国を挑発するような活動をすることによって、東シナ海をより緊張関係の高い海にするべきではない」と述べた。

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