「未来の家族」を話し合う場があまりに少ない

価値観が激突する「生殖医療と家族」を考える

長谷川:これらはけっこう昔からある技術で、科学として目新しいところはないのですが、生まれてくる子どもに選択権がないなど、将来ゲノム編集で出てくるであろう問題を先取りしているところもあるんです。

特にAID(非配偶者間人工授精=第三者の精子を使って子どもをつくる)などは何十年も前から行われているので、この技術で生まれた子どもたちが大人となり、その声を、もう聞くことができるんですね。

こうした技術は使う本人(親)だけではなく、それで生まれてくる子どもに大きくかかわることなので、子どもの立場の人たちの声を聞いていきたいなと。

「子どもの立場の幸せ」をきちんと考えているか

――私も、家族の形は何でもアリだと思うんですけれど、ただし「子どもの立場の幸せ」を考えていなければ、それはどんな形の家族でもダメなのではないかなと。その点、その技術で生まれた人の声を聞くことは大事ですね。

長谷川:そうなんです。ですから、このプロジェクトのキック・オフ・イベントでは、AIDの技術で生まれた成人の方2名をお呼びして、「そういう形で生まれて、またそれを知ったことによって、どういうことを思ったか」を話してもらうところから、議論を始めました。

――これまでイベントなどをやってきて、来場者の方などは、どんな反応だったんでしょうか?

詫摩:みなさん、科学館には遊びに来ていただいているのに、すごく深いディスカッションができていると思っています。

たとえば、ご兄弟にハンディキャップがあったことで、「小さい頃にはこう感じていたけれど、もしこういう技術があったら違ったんじゃないか」などといった、個人的な体験を語ってくださる方もいらっしゃいます。

私たちスタッフもトークイベントに参加することがあるのですが、そうするとスタッフの側も、その場にいた方のご意見を聞いて、考えが変わったりするんですね。そうしたことも非常に面白いです。

参加されたみなさんは、きっと「普通ってなんなんだろう?」とか、「家族みんなにとっての幸せって、なんだろう?」とか、そういうことを考えて考えて、もやもやしたままお帰りいただいているのかな、と思います(笑)。

長谷川:僕たちも、結論を出してもらおうとは考えていないんです。その場で答えが出るような話ではないので、問題意識を持って、もやもやしたまま帰っていただければいいと思っているので(笑)。

高校で出前授業も行っているのですが、生徒たちからはいろいろ反応があります。4、5人のグループごとにディスカッションをしてもらいますが、みんなけっこう、ボキャブラリー豊かに語ってくれます。

こうした問題は、政治家など一部の専門家だけで決めるべきものではないですよね。みんなで議論しつくして、考えなきゃいけないことだと思います。

(撮影:風間仁一郎)

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