「リン危機」勃発が秒読み! 7月にも在庫払底、生産ライン停止が続発か
新たな資源危機が日本を襲っている。黄リンという原料の逼迫により、半導体、液晶パネル、加工食品、自動車、医薬品など実に幅広い業界で、生産停止へと追い込まれかねない状況が迫っているのだ。
柳萬雅徳・ラサ工業社長は証言する。「もはや価格転嫁とか、そういった次元の話ではないんです」。さらには、「決定的な不足局面が7月にも発生しかねない」(某メーカー)という。
発端は中国政府当局による輸出税率引き上げだった。5月20日、20%だった黄リンの税率を一気に120%に引き上げると発表。翌日から12月31日までの時限措置だが、今回の“事件”で、リン製品メーカーは軒並み青息吐息の状況に陥った。三井化学系の下関三井化学、東ソー系の燐化学工業、無機化学が主体の日本化学工業、そしてラサ工業はすぐさま取引先に値上げ要請を開始した。
増税ショックに追い打ちをかけたのは、5月12日の四川大地震による供給ストップ。黄リンは四川・雲南・貴州・湖北の各省内陸部で産出され、上海と坊城の二つの港から輸出される。地震の影響で、最大産出地の雲南からの輸送網が完全にシャットアウトしてしまった。
そもそも黄リンは水力発電量が確保できる6月から生産が始まる。それを間近に控えた大地震発生。「大地震発生時点で仮に2カ月分の在庫があったとしても、早ければ7月中旬には払底する。雲南省や四川省からの陸路が復旧することを祈るばかり」とリン製品企業担当者は語る。
さらに8月の北京五輪では、黄リンは危険物扱いとなり、その間上海港が使えなくなることがすでに決まっている。“悪条件”が重なって、日本の各産業で「生産調整」がいよいよ現実感を増しているのである。