「リン危機」勃発が秒読み! 7月にも在庫払底、生産ライン停止が続発か

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中国依存の脱却は困難 「選別供給」の現実化も

黄リンとは高濃度・高純度の良質なリン酸を作るための原料で、自動車ボディ表面処理から半導体や液晶のエッチング、食品添加物まで、用途は実に多岐にわたる。そもそも日本は黄リン輸入の9割を中国に依存している。緊急措置として考えられるのは中国以外からの調達だが、現実問題、それは非常に困難だ。

理由は肥料向けリン酸の世界的需要の高まりにある。ヨルダン、南アフリカはすでに囲い込みに走っている。米国に至っては今や、バイオエタノール原料用作物増産のため、中国をはじめ海外からの購入に回る立場にある。全国農業協同組合連合会(全農)は、毎年7月としている肥料の販売価格設定を4月に前倒しして値上げを実施した。そもそも肥料向けは濃度が低く不純物の多いものがほとんどだが、こうした状況を受け、黄リンを用いた高単価の高純度リン酸を代用するという、逆転現象さえ生じてしまっているのだ。

こうした事態を、すべての企業がただ傍観しているわけではない。繊維商社の蝶理は、中国最大級のリン酸企業である江蘇澄星燐化工などと合弁企業を設立。6月には大阪府堺市にリン酸貯蔵タンクを稼働させた。だが「今後も継続的にリン酸が輸入できるかどうかは懸念が残る」(業界関係者)との声が出ている。

一方で、今回のリン危機に対する国内の認識は極めて薄い。顧客側は「値上げは仕方ないけれど、供給のほうはよろしく、と気楽に構えている」(同)のが現状。当然のようにあったリン酸の不足など、関係者でさえ想像だにできない様子なのだ。

現実に在庫が払底すれば、何が起こるのか--。考えられるのはリン製品各社からの「選別供給」である。

中でも、半導体と液晶パネル向けは最も高純度で良質なリン酸を使用しているため、代替は不可能。そのため「仮に絶対的なリン不足に陥れば、まずは半導体や液晶パネル向けの供給が優先されるだろう」(同)と危ぶむ声が出始めた。

さらに、時限措置が解除され事態は一時収束したとしても、次の2010年の上海万博時には再度供給不足に陥る、との指摘もある。危機感を持った対処が求められている。


(二階堂遼馬、石井洋平 =週刊東洋経済)

※写真と本文は関係ありません

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