2月相場は日米首脳会談に大きく左右される 日本株は米国に「ガツン」と言えば上がる?

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日本国内の自動車メーカーは、これまで米国内で多くの雇用を創出していることは周知の通りだ。だが、トランプ大統領は「より多くの米国人を雇ってくれ」という要望を出している。まだ交渉そのものが始まっていないことから展開は読みにくいのだが、一つ参考になるのが、1980年代から1990年代にかけておきた「日米貿易摩擦」である。

日本は当時、対米輸出自主規制や、輸入関税100%、米国製品調達強制などを迫られた経緯がある。米国の膨大な貿易赤字を解消するため、当時、巨額の対米貿易黒字を計上していた日本が標的となったわけだが、米国の主張はかなり「自己都合的な内容」だった。

1995年の日米交渉当時、故橋本龍太郎通産相の「のど元」に、米通商代表部(USTR)のミッキー・カンター代表が竹刀を突きつけている映像や写真を覚えている読者の方もいるだろう。

実際は、カンター氏が剣道有段者の橋本氏に竹刀を贈り、そのカンター氏に竹刀の使い方を教えただけなのだが、これだけを見ると、日本が米国に迫られていると勘違いしてもおかしくない構図だった。1980年代に米国の自動車関係者がハンマーで日本車をたたき壊す場面が繰り返し日本でも流れたことがあったが、それと並んで、日米貿易摩擦を象徴するシーンだったといえよう。

米国の標的は中国のはずだが、ガツンと言えない日本

現在の日米との貿易関係は、当時とはまるで違う。米国の最大の貿易相手国は、すでに日本ではなく中国である。トランプ大統領は、中国を「為替操作国」に認定すると息巻いている。まず話し合いを実施するとややトーンダウンしているが、トランプ政権における通商政策の最大のターゲットは、貿易関係を考慮すると、日本ではなくやはり中国だろう。

1990年代半ばには、当時の米大統領ビル・クリントン氏のそっくりさんを起用した、某缶コーヒーメーカーによるCMがあった。内容は「相手側にガツンと言ってやれ」と酒場で息巻いていた日本人ビジネスマンが突如、ホワイトハウスらしき場所に通され、唖然としているときに、クリントン氏のそっくりさんに「Tell Me ガツン?」と言われる設定だった。

当時、筆者は子供だったことから、あのCMの意味合いを理解できなかったが、この歳になると「米国に何もいえない日本」(上司にはなかなか意見を言えない日本人)といった皮肉をこめたCMだったのだと理解できる。
ここらへんの雰囲気も、今の市場に微妙に影響しているのかもしれない。

こうなると、あのCMの「続編」が20数年ぶりに誕生するのも時間の問題かもしれない。その際、主役は米中首脳かもしれないが、もし作成されれば、かなりインパクトのある仕上がりとなりそうなのだが。

田代 昌之 マーケットアナリスト

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たしろ まさゆき / Masayuki Tashiro

北海道出身。中央大学文学部史学科日本史学科卒業。新光証券(現みずほ証券)、シティバンクなどを経てフィスコに入社。先物・オプション、現物株、全体相場や指数の動向を分析し、クイック、ブルームバーグなど各ベンダーへの情報提供のほか、YAHOOファイナンスなどへのコメント提供を経験。経済誌への寄稿も多数。好きな言葉は「政策と需給」。ボラティリティに関する論文でIFTA国際検定テクニカルアナリスト3次資格(MFTA)を取得。2018年にコンプライアンス部長に就任。フィスコグループで仮想通貨事業を手掛ける株式会社フィスコデジタルアセットグループの取締役も務める。

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