「アップルOB」がやたら集まる新興企業の正体 社員の6割以上がアップル出身

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「(会社で)何が起きているかわかるのは、すごく新鮮な気分だ」と、5月にアップルを辞めてパールに移ったラティマーは言う。「ここでは誰もが全体に貢献しているから、誰もが全体を知る必要がある」。

パールの食堂でランチを楽しむ社員たち。ここで情報交換も行われる(写真:Anthony Cruz/The New York Times)

アップル時代の同僚が多いことも、働きやすさにつながっている。

パールのブライソン・ガードナーCEO(最高経営責任者)は、意識的にアップルの社員をヘッドハントしている。実際、約80人のスタッフのうち50人以上がアップルで働いた経験がある。

アップルは給料こそいいが、多くの社員はiPhoneやマックの改良版を次から次へと送り出すことに辟易していると、パールのブライアン・サンダーCOO(最高執行責任者)は語る。「彼らはゾクゾクするものを求めていた。新しいことに挑戦するときがきていた」。

品質へのこだわりはアップル並み

その点、パールは魅力的だった。無数の車に最新モデルのようなハイテク安全機能をもたらして、自動車生活を安全にしよう――。「新車を買わなくても、マイカーを最新式にする手伝いをしたい」とサンダーは語る。

製品第1号は「リアビジョン(RearVision)」。定価500ドルの自動車用バックカメラで、出荷開始は昨年9月。専門家の評価はすこぶるいいが、競合製品よりも価格が張るため、売り上げの伸びは緩やかにとどまっている。ネット通販のアマゾンやクラッチフィールドでは、12月から400ドルに値下げした。

ガードナーは、出荷が遅れて、クリスマス商戦に小売店(実店舗)で取り扱ってもらうのに間に合わなかったことを認める。だが、アップル同様、パールには長期的なビジョンがある。現在も自動駐車技術など新たな運転支援システムの研究を続けている。

資金的には、すでに有名ベンチャーキャピタル(アクセル、シャスタ・ベンチャーズ、ベンロックなど)から5000万ドルを調達しているが、今年は新たな資金調達が必要になると、ガードナーはみる。

パールの本社は、サンタクルーズのビーチから15キロメートルほど内陸に入った緑豊かな街のオフィスビルにある。大勢の人が行き来するシリコンバレーのアップル本社とは別世界だ。

だが、パールにはアップルの影響がはっきり見て取れる。

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