トランプ政権になっても政府職員が残るワケ 元国務省職員が語る政府で働く者の心得

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だが、結果として、大半の人々は自発的にイラクに赴いた。国務省には数千人の職員がいるが、イラク侵攻に絡んで良心に基づく辞任をしたのはたった3人。アフガニスタンに関しては1人に過ぎなかった。一定数以上の外交担当者が抗議の辞任をした例は、ベトナム戦争以降、途絶えている。

政府職員を辞めるのは究極の選択といえる。家族関係、将来の雇用、子供の学生ローンや本人の精神衛生などに響くからだ。年金や退職給付を受けるには勤続20年以上が必要だ。すべてを危険にさらす決定は個人にとって非常に重く、一斉に辞任するなど考えられない。

「告発」して早期退職に追い込まれた

筆者自身は、ブッシュ、オバマ両政権によるイラク再建計画に携わっていた際、計画をめぐる無駄や詐欺、そして管理のミスに触れて、堪忍袋の緒が切れた。再建計画に変化を及ぼせなかったため、この問題に関する著書『We Meant Well』も世に出した。これに対して国務省は筆者の投獄や解雇などを図った挙句、早期退職へと追い込んだ。

トランプ政権は発足したばかりだ。落ち着こう。人に対して反発するのと同時に、政策課題に思いを致そう。感情的にはならず、地についた考え方をしよう。良心がとがめるなら選択肢を考えよう。だが、道義に基づいて行動するのは自由だが、そのすべての代償を引き受けなければならないことは、覚悟しておこう。

筆者のピーター・ヴァン・ビューレン氏は米国務省に24年間勤務した経験がある。著書に、イラク再建の失策を題材とした「We Meant Well: How I Helped Lose the Battle for the Hearts and Minds of the Iraqi People(原題)」など。このコラムは同氏の個人的見解に基づいている。
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