トランプ政権になっても政府職員が残るワケ 元国務省職員が語る政府で働く者の心得
職にとどまるには忍耐を要するが、特定の大統領や政策、嫌な上司や同僚が永遠にとどまり続けることはない。選挙で宣伝されたアイデアが、世界的な情勢の変化に伴い、一夜にして消えてしまうこともある。そして、たまには良い人だっている。実際に筆者が仕えた最高の大使は、筆者が支持しない政党から任命された人物だった。
とどまり続ける苦痛を和らげる方法もある。その1つは、党派による影響が少ない部署や事業を探すことだ。教育面での交流を扱う部署が政治的宣伝をフルに行うようになってしまった後、筆者は技術関連の部署の中に、快適な環境を見出した。
政治的な任命権限を握ったトランプ氏は、自身の目的達成を政府の各部署が目指すよう仕向けるだろう。彼らは有力者に耳を傾けてもらえるだろうが、あなたは多分、そうではない。
辞任を選ぶ人はごくわずか
政策や事業に強い反感を持つ者は、法律が許す範囲内で、ジャーナリストと協力して広く世の中に訴えようとするかもしれない。電話をかけたり、電子メールを送信する前に、その資格を持つ弁護士に相談してほしい。そして、非公式の情報リークを行った者は政府に冷遇され、その安全は保証の限りではない。
最後の選択肢は辞めることだ。誰しも良心には限度がある。
だが、辞任を選ぶ人はごくわずかだ。15年間にわたる「対テロ戦争」を経て、米国とその同盟国の国民への拷問や、ドローンによる殺人、スパイ行為や情報操作に対して、道徳面で人々は鈍感になった。
国務省内が近年で最も割れたのは、2003年のイラク侵略を支援するため外交担当者を同国に大量派遣する決定がなされた時だった。省内では、ライス国務長官(当時)が、職員に危険な任務を自発的には負わせないという伝統を破って、イラクで働くよう強制したとの批判が巻き起こった。