乃木坂46、女性アイドルの頂点に立った必然 あのAKB48とどう差別化し、のしあがったか
ソニーミュージックのAKB48元担当者が発したこの慨嘆を、同社は『逃がした魚たち』という表題に使い、AKB48によるソニーミュージック時代の楽曲のミュージックビデオ集として後年、DVDを発売したほどだ。
このまま引き下がるのは、もったいない。たまたま秋元氏に「AKBのシャドーキャビネットを作る」という構想があるのを聞きつけ、リベンジを果たしたいソニーミュージックはプロジェクトチームを組んだ。ちなみにシャドーキャビネットとは影の内閣を指し、政権交代に備え野党が模擬的に設置する政策立案機関である。
そのリーダーに抜擢されたのがソニー・ミュージックレコーズの第三制作部部長である今野義雄氏だ。今野氏は過去に米米CLUBやHysteric Blue、YUI、伊藤由奈のディレクターを担当。沢尻エリカや黒木メイサといった女優の歌手デビューを成功させた実績も持つ。今野氏は目下、「乃木坂46運営委員会委員長」として、秋元氏から「トーン&マナー」(ブランドのイメージ、コンセプトに一貫性を持たせること)を一任され、運営全般を統括している。乃木坂46の成功に関して間違いなくキーマンである。
AKB48は体育会系、乃木坂46は文化系
いくつもの運命が交錯し、2011年に誕生した乃木坂46。音楽雑誌などでは、秋元氏はソニーミュージックがAKB48に多大な投資をして苦労したのに、キング移籍後に大ブレイクして「申し訳ない」との気持ちから、「新しい女性アイドルグループをソニーで立ち上げた」と説明している。が、ソニーミュージック側から見た経緯は、こうだ。
「AKB48のシャドーキャビネットを作ることについて、もう一度ソニーミュージックから提案させてもらえないかとお願いし、1年弱、秋元先生のところに通いました。ありとあらゆるアイデアを持って話し合いを続け、秋元さんの中に今の乃木坂の骨格的なものができあがっていきました。それはのちに、『16人のプリンシパル』(2012~2014年にPARCO劇場などで上演)という舞台につながっていくもので、1幕目を見たお客さんが投票で選んだ配役で2幕目を上演するものでした。アイドルといっても、もっと芝居寄り、ミュージカル寄りであり、発想は劇団に近いものでした」。
ではあらためて乃木坂46とAKB48の違いは何なのか。この核心に触れる問いについて、今野氏はこう分析する。「あるメディア関係者は、AKB48グループには秋元氏が放送作家として培ってきたいろいろなノウハウが盛り込まれている、乃木坂46には『川の流れのように』(美空ひばり)を生み出したような高い作家性が表れている、と評していました。AKB48グループは体育会系、坂道シリーズは文化系、と言う人もいます。秋元先生の中に眠る2つの領域がそれぞれ色濃く出ているように思います」。
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