新生銀行の八方ふさがり−斬新で高い収益性を目指したが…リテールでもついに赤字
悪循環にはまり込んだノンバンクの陥穽
さらに厳しいのが、アプラス、シンキのノンバンクだ。
CCFのロバート・R・ルートン本部長は「一般的に、今まで、25%の貸出金利で貸倒率が8%、営業経費率が10%前後。調達金利が2%で5%の利益が出る構造。これが17%の貸出金利になり、4%の貸倒率、調達金利は銀行連結企業のメリットで2%に抑えたまま、経費が8%程度なら、3%の利益。十分魅力がある」とビジネスの存続可能性を強調する。
ただ問題は、そこに落ち着くまでのコスト負担と、縮小した市場で一定のシェアを占められるかということだ。過払いの引当金を積み、前期・今期は黒字でも、改正貸金業法の上限金利引き下げ、総量規制の本格導入は来年6月以降。総量規制が行われ、新規、途上融資を出さないと、顧客の貸倒率は上昇する。締め出された顧客が過払い返還請求に走る。この悪循環がいつまで、どれほどのコストを発生させるのか読めない。
また、「新規の顧客を先進的なITシステムを使って、銀行の顧客基盤の中から開拓する」(ルートン氏)ことは、すでにメガバンクが取り組み、なかなか成功していない。信用力の高い層の資金ニーズ自体が限定的なのだ。
米GEが売りに出している消費者金融のレイクについて、新生が買い手の本命と取りざたされている。R・グプタCFOは「一般論として、のれん代や過払いのコスト、自己資本への影響、今後の戦略に合致し、利益を向上させるものかどうか慎重に精査したうえで決める」としている。経営健全化計画の縛りがある中では、こうしたコストが発生する可能性の高い買収は一種の賭けだ。
年明け、TOBと第三者割当増資500億円の追加的引き受けで、政府を抜いて32・6%を保有する筆頭株主に返り咲いた米系ファンド、J.C.フラワーズ。新生上場で十分儲けているし、日本での橋頭堡として、投資価値はあるのだろう。
アプラスを新生に持ち込んだ杉山淳二会長の退任は影を落とすかもしれない。一方、非常勤とはいえ、八城前社長の会長復帰の狙いもいま一つ不透明。中国建設銀行の顧問は続け、北京に常駐するという。新たな提携の可能性でも探るのか。新生銀行を取り巻く靄(もや)は晴れない。
(大崎明子 撮影:尾形文繁 =週刊東洋経済)
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