新生銀行の八方ふさがり−斬新で高い収益性を目指したが…リテールでもついに赤字
旧来の邦銀スタイル拒否 いまだ解は見つからず
00年、新生銀行のスタートに際し、八城政基前社長はビジネスモデルの変革を打ち出した。
法人部門では利ザヤの取れない融資はやめ、投資銀行業務を主体として手数料収益や証券運用など非金利収入で稼ぐ。一方リテール部門では、コストの安い預金を集めて、預貸収支(商業銀行業務)で儲ける--。
邦銀の法人顧客との間の、株式持ち合いに象徴されるもたれ合いの関係をやめ、リテールで斬新なサービスを提供すれば、収益性の高い革新的な銀行ができるとの狙いからだ。
だが、現状を見るかぎり、新しいビジネスモデルで成功したとは到底いえない。ポルテ社長も何らかの付加価値を与えることはできていない。
日本は長年続いた金融規制によって圧倒的な貯蓄超過状態にある。しかもリスク資産は少なく、預金に集中。一方で資金需要は少ない。要は、銀行が儲からない構造だ。しかも真似が容易で、市場による裁定も効きやすい金融商品は差別化が難しい。
米銀大手が儲かっているのは、経済成長し、資金需要があって、規制環境の違いから、証券やノンバンクを取り込めたうえに、離合集散を繰り返し、規模の利益を追求したからだ。JPモルガン・チェースは日本で名の知られていた銀行だけでも、いままで10行以上の個人ローン、カード事業を吸収している。
前身の日本長期信用銀行の破綻で、新生と持ち合い株を保有していた地銀や事業会社は損失を被った。そのうえ、八城前社長は対法人顧客でドライな関係を目指した。当時は瑕疵(かし)担保条項を活用した貸し剥がしの批判も集めた。その結果、互いにメリットのある場合にだけ取引をする銀行、というイメージが定着した。
米ベアー・スターンズの証券化チームの引き抜きに始まり、現在では、不動産主体のノンリコースローン、プリンシパル・インベストメンツ(自己資金で投資し、企業のM&Aや再生、財務リストラを図る)などへ対象を広げ、法人部門の人員は750名程度になっている。
プリンシパル担当の小座野喜景本部長は「法人取引先は6000社ぐらいだが、1~2割がデイリーで取引がある。人材も多様化し、提供できるサービスが増えたため、企業のバランスシートの問題解決に深くかかわるようになった。そうした実績が同業他社からの案件にもつながっていっている」と強調する。
ただ、貸出金は半分以上が金融・保険業と不動産向けで、多くを期間の短い証券やノンリコースを中心とする不動産向けが占める(下表)。
儲からない融資をしなくて済むようになり、手数料主体で環境がよければ収益性はよい。だが、条件勝負の回転商売で競争が激しい。
そのほか、為替、デリバティブ、株式関連やその他のキャピタル・マーケッツ、クレジット・トレーディングなど、対市場取引が法人部門の粗利益の3分の1以上を占める。今後は、地銀等ほかの金融法人への投資信託など、商品の供給を増やしていくという。外資系だから、海外での自己資金の運用や、海外の運用商品を金融法人等へ提供することにかけては強みがあるだろう。ただ、市場関連は、前期のように環境変化の影響を受けやすい。