天才騎手と人気アナ夫婦が向き合う覚悟

命がけで戦い続ける夫を妻は献身的に支える

福永騎手の実家を訪ねた日。翠さんの目に飛び込んできたのは、車椅子に乗った男性の姿だった。福永騎手の父、洋一さんはかつて天才と呼ばれたジョッキーだったが、福永騎手が2歳のとき、落馬。命こそ取り留めたものの、下半身不随となり思うように言葉もしゃべれなくなっていた。そんな父を30年以上、母が支えていた。

初めて見た、残酷な競馬騎手の現実だった。そして交際から8カ月後、福永騎手は翠さんにプロポーズした。

「なあ翠。俺は競馬騎手だ。落馬して一生介護が必要になるかもしれない。レースで死ぬ可能性だってある。それでも俺と結婚してくれないか?」(福永騎手)

「うん。祐一君の大好きな競馬を納得いくまでやって欲しい」(翠さん)

父だけでなく、福永騎手自身もこの時までに何度も落馬を経験。22歳の時には腎臓を一つ失う大けがも負っていた。競馬に全てをささげる男の強い思いが込められた言葉。それを受け取った翠さんは、この時、何があっても夫を支える覚悟をした。

2013年8月、2人は入籍。翌月、翠さんはフジテレビを退社し、競馬騎手の妻となった。翌年には長女が誕生。家事に育児にと奮闘しながらも幸せな日々を送っていたが、結婚から2年が経ったころ、恐れていたことがついに起こってしまった。

2015年10月31日。いつものように福永さんのレースを自宅で観戦していた翠さん。順調な走りを見せていたが、ゴールを目前にしたその時。福永騎手の乗っていた馬が突然、転倒。福永騎手は体を激しく地面に叩きつけられた。

翠さんがすぐさま病院に駆けつけると、命に別状はなかったものの右肩剥離骨折、じん帯断裂、胸の骨も骨折するという全治5カ月の大ケガだった。

翠さんの脳裏には車いすに乗った夫の父の姿が浮かんだほどの出来事だったが、最悪の事態は避けられた。とはいえ、復帰の道のりも過酷だった。福永騎手は右肩を手術し、壮絶なリハビリは3カ月間に渡った。その間も翠さんは、常に夫に寄り添い、復帰のための体調管理を続けた。

壮絶なリハビリを経て復活を果たす

その甲斐あってか、2016年2月13日、夫は予定より1カ月も早く復帰。翌日には、復帰後、初勝利をあげ、さらに同年8月27日には、日本競馬史上9人目のJRA通算1900勝という輝かしい金字塔を樹立した。

夫は、妻への感謝を語る。

「応援して下さっている皆さまのおかげなんですけど、特に今回の1900勝に関してはケガの間ずっとサポートしてくれた妻のおかげだとは本当に思います。今も全然ケガの後遺症を感じることなくできているのは献身的サポートがあったおかげだと思いますし、今回の100勝の区切りは特別なものがあります」

常にケガや死と隣り合わせの夫とそれを支える妻。誰もが羨む夫婦だが、その幸せの裏では常に覚悟と向き合っている。

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