フルマラソン4時間切り!85歳「超人」の秘密 老化は意志の力である程度抑えられる
「(自分たちの)論文の中にそれより上の人はいなかった」とトラップは述べた。「驚異的な生理能力だ」。
マクギル大学で、ホイットロックは筋肉の画像診断や組織検査も受けた。筋肉の最も小さい機能単位を「運動単位」(一つの運動ニューロンとそれが支配する筋繊維)というが、運動単位の数は年齢とともに減少していく。
たとえば健康な若い大人であれば、前脛骨筋(つま先を上げるのに使われるすねの筋肉)の運動単位の数は約160だ。だがヘップルによれば、80歳代になるとこの数は約60に減少する。だがホイットロックでは100に近かったという。
ヘップルによれば、ホイットロックの肉体が衰えていない理由は主に、神経栄養因子と呼ばれる物質の量がずっと高い水準を維持していることにあるとみられる。神経栄養因子はニューロンを保護し栄養を供給し、その維持を支えている。
「非常に有利な条件だ」とヘップルは言う。彼は最近、マクギル大学からフロリダ大学へと移ったが、今もホイットロックら高齢アスリートの分析・研究を続けている。「運動単位が年齢の割に多いとすれば、それは筋肉量の維持につながり、ひいては力も強いということになる」。
要素は遺伝的なもの以外にいくつもある
ホイットロックの驚きの持久力をもたらしている要素は、遺伝的なもの以外にいくつもあるとメイヨー・クリニックのジョイナーは言う。
彼はロサンゼルス五輪(1984年)の女子マラソンで金メダルを取ったジョーン・ベノイト・サミュエルソンとホイットロックを比較・分析した。ベノイト・サミュエルソンは50歳代後半になってもフルマラソンを3時間を切るスピードで走っており、60歳代になってもタイムの維持を目指しているという。
ホイットロックもベノイト・サミュエルソンも、外向的なタイプとは言いがたい。だが彼らのように年齢が上がっても活発に活動を続けるアスリートたちは「心の中の13歳の自分を生かし続けている」とジョイナーは指摘する。