日本のREIT会社 財務運営は保守的で流動性管理もなされているが、今後の金融・資本市場の動向を注視 【ムーディーズの業界分析】

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ストラクチャードファイナンス・グループ
VP−シニア・クレジットオフィサー 増子 卓爾

現在の格付け、格付けアクション

ムーディーズは2007年に新たに2社の格付けを公表し、格付けする日本のREIT会社の総数は22社となった。2007年には4社の格付けを格上げした。2008年には、1社の格付けを格上げし、1社の格付けを方向未定で見直しの対象とした。これを除く20社のREIT各社の格付け見通しは安定的である。

主要な業界動向と格付けへの影響

1) 東京の不動産賃貸市場は依然堅調

東京23区におけるオフィス賃貸市場では、2007年には比較的大型の新規供給がみられたが、需要が供給を上回り、空室率は2%を切りほぼ満室状態を享受している。今後2-3年は、大規模な供給は限定的と予測されており、オフィス需要も底堅くタイトな需給バランスが続くと想定される。

東京都における賃貸住宅市場のファンダメンタルズは堅調である。当該市場は一般的に、テナント数、賃貸住宅戸数といったストックが大きいため需給が安定し、賃料収入などキャッシュフローは、景気変動などの影響を受けにくいという特性があると認識している。加えて東京都においては人口流入の傾向が顕著であり、世帯数の増加が近時の賃貸住宅の供給を十分に吸収していると考えられる。

今後のリスク要因として、分譲住宅への大量の住み替えが起こると考えられるが、格付け対象のREIT会社は、都心部に近いなど賃貸ニーズの強いエリアをターゲットとし、テナントもシングルなど少人数世帯を重視していることから、このような要因によるキャッシュフローへの影響は限定的であろうと考えている。

2) 不動産売買市場に変化の兆し

昨年以降の地価の上昇を警戒し、金融機関は不動産融資により慎重な姿勢で臨んでいる。またサブプライムローン問題から外資系金融機関のローン・オリジネーションの停滞もみられ、不動産市場全般への資金供与が縮小傾向にあると推測される。一方、2007年9月の金融商品取引法の施行により投資の助言や運用に関する業務は規制を受けることとなった。

こうした状況を背景に、国内の不動産売買市場に変化が現れているようだ。引き続き希少性の高い都心の大型オフィスは、依然取得競争が激しく、要求利回りが4%を切る低い水準で取引される事例が散見される一方、競争力の低い地方のオフィスや、東京圏以外の賃貸住宅を中心に、売り物件が増加し、要求利回りの上昇、取引価格の低下がみられる。しかし、ムーディーズが格付け対象とするREIT会社は、オフィス・賃貸住宅に関して東京圏中心に投資しており、個別物件においてもサブ・マーケットの中で高い競争力を有している物件が多い。したがって、ムーディーズは現時点で、この売買市場の変化が各REIT会社のポートフォリオに及ぼす影響は限定的であると認識している。

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