日本のREIT会社 財務運営は保守的で流動性管理もなされているが、今後の金融・資本市場の動向を注視 【ムーディーズの業界分析】

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小


3) 金融・資本市場に変化

各REITの投資口価格は、配当利回りの国債利回りとの格差縮小や金利上昇懸念の台頭、サブプライムローン問題に起因する世界的な信用収縮の影響を受け、2007年6月を境に低迷し、現在に至るまで調整局面が続いている。この間の投資口価格の動向を東証REIT指数でみると、最高値を記録した2007年5月31日から40%超も下落している。この影響で、昨年以降、新規投資口発行額は大幅に減少している。ムーディーズは、投資口価格の変調が、直接的に格付けに影響するものではないと認識している。投資口価格は、REIT会社のファンダメンタルズだけではなく、投資口の短期的な需給関係により影響を受けるものと思われる。したがって、投資口価格の動向と、中長期的に債務の信用力を測る格付けとの、直接的な相関関係は限定的であると考えている。

REIT市場の創設以来、潤沢に資金供与が行われた金融機関との取引状況も、2007年ごろから転機を迎えているようだ。上述のように不動産市場全般への資金供与が縮小傾向にあると推測される中、REIT業界一般にとって、資金調達力の悪化という点で信用リスク上の影響は大きい。

4) 財務運営は堅実だが、今後の市場への信用供与の動向を注視

ムーディーズは以前より、金融機関が積極的にREIT業界へ融資を行っている間は、REIT各社間の信用力の差は顕在化しにくいが、一旦資金量が逼迫し始めると、各REIT会社の資金調達力の差は鮮明になり、ひいてはそれがREIT会社間の信用力の格差につながると述べてきた。そして資金調達力は、良好な環境下でいかに保守的なレバレッジマネジメントを実践し、債務の長期化・期日の分散化・金利の固定化等を図り、財務の健全性を維持しているか、主要取引金融機関と深耕な取引関係を構築しているか、調達手段の多様化を図っているかにより左右されると述べてきた。

ムーディーズの格付け対象REIT会社は、従来からの保守的な財務運営が奏功し、現在の金融・資本市場の変調の格付けへの影響は限定的であると認識している。

流動性

REIT会社は利益の90%以上の配当を行うことが支払い配当の損金算入の要件であるため、内部留保は一般の事業法人に比べて制約を受ける。そのため既存借り入れの返済は、リファイナンスのほかは、主に新規投資口募集か物件売却に頼らざるを得ず、流動性管理は大変重要である。

流動性リスクを評価するにあたり、ムーディーズは今後1年以内に期限が到来する債務の合計額に対し、十分な流動性が確保されているかを確認している。その際に重視するのが、どれだけの確実性とタイミングで資金を確保できるかという点である。

流動性の具体的評価としては、配当支払い考慮後の手元現預金の水準とコミットメントライン契約額、当座貸越や極度貸付枠など非コミットファシリティからの調達を含めた取引銀行からの流動性サポートの度合い、および担保に供されていない物件からの資金調達の可能性を検証している。格付け供与REIT先22社の流動性評価は、概して足元の流動性への懸念は現時点では限定的と考えている。

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
マーケットの人気記事