北海道新幹線「4時間の壁」阻む3つのハードル 青函トンネル内高速運転はいつ実現する?
問題は、この間に青函トンネルが貨物の大動脈となってしまったことだ。貨物列車がこの区間を一日40往復も走っている中では、新幹線とのすれ違いが発生する。その際に、新幹線が高速で走行していると、トンネル内の気流(微気圧波)のために貨物の荷崩れが発生する可能性がある。
さまざまな方策が検討されたが、結果的に2016年の開通時点では、新幹線は全便が青函トンネル区間では時速140キロに減速ということになり、最速達(盛岡で切り離しの必要な「こまち」の併結をせず、盛岡以北では新青森のみ途中停車)の便でも所要時間は4時間2分となっている。
この問題は、国交省の主導する「青函共用走行区間技術検討ワーキンググループ」で検討が続いている。当面の目標としては1日に2時間程度、「貨物列車の走らない時間帯」を作り、その時間帯はトンネル内を時速200キロ以上で走らせて「4時間を切る」ことを目指してきた。2018年春を実現のメドとして検討が続けられてきたが、検討が進んだ結果として新たに3つのハードルが浮上してきている。そのため、2018年の実現は物理的に不可能であり、現時点では最短でも2019年から2020年になるという。
補修作業や車両不足…課題は山積
1つ目のハードルは「夜間の作業時間」に限界があるという点だ。時速200キロ以上の走行を行うには、レールの凹みや傷などを修復する「レール削正」という作業が必要になる。また海底トンネルということで、塩分を含んだ水たまりの影響などで腐食しているレールの補修も必要だ。
実際に高速化する前には、高速試験走行を行うことになるが、これも夜間に行う必要がある。その一方で、時速140キロで新幹線の営業運転を続ける中では、定期的な保線や検査の作業も同じく夜間に入ってくる。そうなると、「全く時間が足りない」ということになる。
2つ目のハードルは、車両などの不足という問題だ。実際に新幹線の高速走行を行う際には、貨物列車の走らない時間帯に入ったあと、まず「軌道上の支障物」の確認が必要となる。この確認にかかる時間を短縮するためには、高速走行が可能な「専用の確認車」が必要で、その確認車の稼働は2017年末、つまり2018年春まで時間を要する見込みだ。ということは、高速試験走行が始められるのは早くても2018年春ということになる。
その高速走行試験だが、これは実物のE5・H5系を使用して深夜に行うことになる。だが、現時点では編成数には余裕がない。E5系の製造スケジュールが当初発表より遅れていることもあるが、もう少し予備編成が増えないと本格的な深夜の試験走行はできない。
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