北海道新幹線「4時間の壁」阻む3つのハードル 青函トンネル内高速運転はいつ実現する?

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3つ目のハードルは、ダイヤの問題だ。これがかなり面倒な問題として浮上している。

青函トンネル内を走る貨物列車(北海道新幹線開業前の様子)(写真:つぼ / PIXTA)

まず貨物のダイヤとの競合だが、夜間の作業時間を延長すれば貨物を減便しなくてはならないし、昼間に新幹線を高速化する場合には、その時間帯は貨物を走らせることはできない。貨物の減便は、上りの首都圏方面行きであれば野菜などの生鮮食品が「消費地の市場の竸りに遅れる」という問題を生じ、下りの北海道行きであれば「生活雑貨や出版物が丸一日遅れる」という影響が出る。

一方で新幹線のダイヤだが、仮に日中に速達型を走らせることができた場合には、その時間帯の前に「確認車」を走らせる必要があり、確認車の走行時間帯には新幹線も走らせることができない。その結果として、例えば現在最速の「はやぶさ5号」(東京8時20分発・新函館北斗12時20分着)を速達化すると、時速140キロ走行の新幹線が上下4本ほど走れなくなるという。では、1時間ほどある「速達枠」に新幹線を2本通せばいいという考え方もあるが、そうすると車両のやり繰りがつかなくなる。

また、夜間の作業時間に「確認車」による支障物の確認も行った上で、朝の始発を速達化するというアイディアもあるが、始発便は奥津軽いまべつや木古内にも停車しなくてはならない(そうでないと、この両駅の利便性が犠牲になる)ので、時速200キロ走行のメリットが薄れてしまう。

新幹線の効果アップへ早期決着を

そんな中で、複雑な要素を勘案すると「下りの1本だけ」とか、「下りの数本を臨時列車として多客期のみ」という「限定的な高速化」も検討されている。

この件に関しては、地元である函館では困惑しているようだ。データを取ってみたところ、「首都圏から新幹線で来て航空で戻る」という回遊パターンは非常に少ないことが判明したということがあるし、観光ブームが去った後のビジネス需要を伸ばすための「速達化」を考えると「下りのみ」ではメリットが薄いからだ。

せっかく好スタートを切った北海道新幹線だが、速達化という問題については、掘り下げるに従って難問だということがわかってきた。だが、北海道経済を立て直す切り札として新幹線の経済効果を高めるには、この問題には早期に決着をつけておかないといけない。整備新幹線の関連事業として、もっと優先順位を上げることはできないものだろうか。

冷泉 彰彦 作家

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れいぜい あきひこ

1959年生まれ。東京大学文学部卒。米国在住。『アメリカは本当に「貧困大国」なのか』など著書多数。近著に『「上から目線」の時代』(講談社現代新書)。

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