時給1000円超時代のバイトに求められる役割 新卒採用への活用は世の中を変えうる

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平賀:当初のフリーターは「働き方」ではなく「生き方」でした。そういうこともあり、アルバイト情報誌の『FromA』は、求人広告以外の編集記事は実は、「働き方」や「仕事探しのノウハウ」みたいな特集はあまり組んでおらず、ライフスタイルの記事が中心だったのですね。

常見:これからのアルバイトの話をしましょう。

平賀:よりアルバイト市場全体がモザイク化していきますね。働く時間の短期化は進んでいきます。長時間労働が社会の問題になっていますが、アルバイトにおいては、人手不足の中、短い時間でも働くことができる条件で採用を成功させようという動きが出てきています。また学生のアルバイトに関してはインターンシップとの相互作用が起こると見ています。学生さんにインターンシップって人気ですよね?

インターンシップの利点と問題点

常見:はい。就活スケジュールの変更に伴い、インターンシップが採用手段として注目されていることもあるのですが、社会を知る場、人脈を構築する場としても人気です。

平賀:今後は、「飲食でアルバイトするより、企業インターン行ったほうが役に立つよね」ということで、インターンシップにシフトする学生は多くなると思うのです。

常見:もっとも、ブラックバイト同様にインターンシップも問題を抱えています。そもそもインターンシップとは何か、と。セミナーのような内容のものがそう呼ばれていたりします。労働問題で言うならば、タダ働きや、不当に安く働かせることを合法化しているかのような部分もある。ベンチャーでの長期インターンシップは違法労働の温床となっていたりもします。むしろ、アルバイトだと言ってくれたほうが、賃金を支払わなければならないものとなり、わかりやすいと思います。

平賀:インターンシップというより企業でのアルバイトという感じがいいんだと思います。昔もリクルートはたくさんの学生アルバイトを使っていましたよね。そこからバンバン新卒を入れていたじゃないですか。学生アルバイトが、サービス業だけではなくて、一般の企業から注目されるようになると思うのです。もちろん新卒採用目的で。インターンシップとの線引きが難しいですが。

常見:確かに、そこで社員登用があると学生にとっては嬉しいですよね。大手企業が学生のアルバイトを受け入れるようになると、社会は変わるのではないかと思います。それこそ、総合商社のオフィスで学生がアシスタントのアルバイトをしているという。経団連企業が学生のアルバイトを増やせば、世の中変わると思います。もっとも、青田買いじゃないかという批判はあるでしょうけど。

平賀:企業の新卒リクルーティングの柱になっていくのではないかと。

常見:本日はありがとうございました!

インタビューを通じて感じたのは、アルバイトの現場も日々変化しており、雇う側も模索を続けているということである。家庭教師など、一部の職種の「プロ化」という話も興味深かった。
大企業がアルバイトから採用するという流れは賛否を呼ぶだろうが、インターンシップにお金が払われないという問題を解消する上でも、ミスマッチを防ぐ上でも一考に値するだろう。
常見 陽平 千葉商科大学 准教授、働き方評論家

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つねみ ようへい / Yohei Tsunemi

1974年生まれ。北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。同大学院社会学研究科修士課程修了(社会学修士)。リクルート入社。バンダイ、人材コンサルティング会社を経てフリーランス活動をした後、2015年4月より千葉商科大学国際教養学部専任講師に就任。2020年4月より現職。専攻は労働社会学。大学生の就職活動、労使関係、労働問題を中心に、執筆・講演など幅広く活動中。『僕たちはガンダムのジムである』(日本経済新聞社)『「就活」と日本社会』(NHK出版)『「意識高い系」という病』(ベストセラーズ)など著書多数。

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