藤野 中国の銀行には預金金利3%、貸出金利6%という規制があるんだけど、理財商品はそれにとらわれず、自由に金利を付けて販売している「高利回り金融商品」のこと。問題は理財商品の投資先で、たとえば地方政府が行っている投資資金を担っていたりする。ところが、その投資資金が回収できないとなると・・・・・・。
渋澤 経済の成長スピードがスローダウンしてくると、不良債権問題の表面化が一気に高まるでしょうね。高利回りのあだ花的な金融商品が後から問題になるのは日本でも、中国でも同じだね。
尖閣問題で、国民の目をそらすのも限界?
中野 結局、日本の不動産バブルと構図は同じですね。そして最後に痛い目に遭うのは、投資を回収できなくなった理財商品を購入した民間の投資家。
渋澤 内陸部のほとんど人がいないようなところに、巨大なショッピングセンターを建てて、お客が来ないから不良債権化なんていうケースが、これから中国では増えそうですね。
中野 新幹線だってそうですね。中国はLCCを中心にして飛行機での移動が中心だから、新幹線を整備しても利用者がいない。それなのに、地方政府の偉い人たちは、業者からもらえる袖の下に期待して新幹線をつくらせようとする。当然、新幹線も不良債権化する。下手をすれば、中国の成長力が一気に後退する恐れがありますね。大きな転換点が来るかも。
藤野 日本でも室町幕府の時代に一揆が頻繁に起こったじゃないですか。あれ、苛烈な行政を行った役人に対する庶民の怒り、という構図で語られるケースが多いんだけど、実は大半は金貸しに対する怒りによるものなんですよね。全体の8~9割がそう。高い金利でお金を借りたものの、返済しきれなくなり、ついに庶民の怒りが爆発する。中国でも、影子銀行の裏に政府の人間が絡んでいるとなったら、中国国民の怒りが爆発する恐れが十分にあります。
中野 こうした中国国民の怒りの矛先を変えるために、尖閣問題なども利用したわけですよね。
藤野 ところが最近はちょっと状況が変わってきたようです。以前は中国国内に溜まっている中国政府、あるいは共産党に対する国民の不満をそらすため、尖閣問題が利用されたわけだけれども、どうも最近はそれもうまくいかなくなったみたい。先般も尖閣諸島に向けて中国が軍艦を出すデモンストレーションを行って、それをテレビ中継したけれども、全く中国国内の視聴率が取れなかったそうです。中国の人たちは、「もう政府や共産党のやり口にはだまされないぞ」と思っているんじゃないですかね。
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