中野 ギリシャショックの時もそうでしたけれども、本当に悪いことが起こる時って、一気に問題が噴出するんじゃなくて、ジワジワと小さな問題が出てきて、気が付くと大きな問題になっていたりするんですよね。
今後の中国は、逮捕、破綻、政府介入の3点セット
藤野 僕は以前から、逮捕、破綻、政府介入の3点セットという言い方をしているんだけど、それが恐らく今後、出てくるでしょう。日本でもバブル崩壊後に深刻化した住専問題では大量の逮捕者を出しました。これによって、怒りの矛先が逮捕者に向けられるのと同時に、政府は逮捕者を成敗して正義の味方を演じる。国民もそれによって、何となくカタルシスを得ることができる。
それと同じことが、これからの中国にも起こる。具体的には上海や北京あたりで豪遊しているハレンチ男の写真が、ニューズウイークとかフィナンシャルタイムズあたりの記事を飾るわけ。そのハレンチ男は政府高官であったり、民営企業の大成功者だったりするんだな。これが大々的に出てきたら、そこが中国経済にとって大きな転換点になると見ています。今は何かがくすぶっているだけ。恐らく政府関係者は、何事も起らず、このままフェードアウトしたいと考えているでしょう。
渋澤 恐らくそのハレンチ男っていうのは、中国政府あるいは共産党の重要人物とつながっていたりするでしょうね。だから、一人のハレンチ男が逮捕されて、そこから芋づる式に関係者が炙り出されることを恐れている勢力は必ずいるのでは?
藤野 そうそう。「太子党」と呼ばれている、中国共産党の高級幹部の子弟がハレンチ男である恐れは十分にあると思う。
渋澤 ここが中国4000年の歴史の凄いところなんだな。中国古典の勉強からわかったことなんだけど、王朝が変わるたびにその前までの王朝の歴史を書き換えてしまうようだね。つまり、前王朝の主たる民族は根絶やしにされる。
で、新しい王朝に相応しい歴史が創り上げられる。そこには、我々が想像も出来ないような、苛烈な権力闘争があるんだな、きっと。だから近代の中国でも同じことが言えるかもしれないね。習近平政権からすれば、今、中国国内で起こっているさまざまな問題は、胡錦濤前政権が行ってきた政策によるものであり、それを自分たちの政権で変えていくという印象を、中国国民に対して受け付けたいと考えているでしょう。とすると、これは習近平現政権と、胡錦濤前政権の権力闘争ということになるのかも知れない。
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