留学生が見た「東大女子」が感じる意外な圧力 女性はもっと自由になっていい

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もっとも、私の周りの東大生を見ている限り、女子学生のほとんどは自立しており、将来的なキャリアでの成功のために頑張っているように見える。彼女たちは、東大におけるさまざまなイベントでイニシアチブやリーダーシップをとっているし、国内外のコンクールやコンペなどにも参加している。彼女たちは、つねに今より上を目指そうとしている。これは、私が知っている多くの日本のトップ大学に通う女子生徒たちにも言えることで、こうした女性たちが日本の未来を引っ張って行ってくれることを期待したい。

もちろん、私はすべての女性が仕事をするべきだとも考えていないし、あらゆる面におけて男女平等であるべきだとも考えていない。ただ、男女ともに機会均等ではあるべきで、すべての女性が自らの手で未来を切り拓けるような環境を整備することが望ましい。私たち女性は、主婦だけでなく、弁護士や起業家、銀行家、首相にだってなれるべきなのだ。

ヒラリーはかつてこう話したことがある。「女性がどう生きるべきか、それに対する画一的な公式はない。だからこそ、私たちは一人一人の女性が、自身や家族のために選んだ道をリスペクトしなければいけない。すべての女性は、与えられた能力を生かすチャンスを手にする価値があるのです」。

すべては女性自身が決めること

米国のみならず、日本でも最近、女性の在り方や生き方について再び、積極的な議論が行われているように思える。そして、こういう時だからこそ、私は言いたい。メークをするのも、スカートをはくのも、誰かにさせられるのではなく、女性自らがしたいならすべきだ。仕事をするか、家に入るか、それを決めるのも女性自身だ。そして、私たち女性すべては、ルックスや体重、嗜好や夢にかかわらず、社会から対等に扱われるべきなのである。「人と違う」ことに対して不愉快なコメントを言われたら、私たちは恐れずにそれに対する不満や反論を口にしなければいけない。何より私たち女性は自分たちをもっと大切にしなければいけない。

男女平等は女性だけの問題ではない。男性もまた、社会からステレオタイプ的なイメージを押し付けられている。たとえば、男性は強くて、積極的で、一家を引っ張るリーダーシップがあることが望まれるが、反面、こうした素質を持ち合わせない男性は、社会の「理想的な男性像」からは外されてしまう。日本では、繊細で弱い男性は、性的嗜好にかかわらず同性愛者だとのレッテルを貼られてしまうことすらある。

「もし私たちが、私たちではないものでお互いを定義するのをやめ、そのままの自分をお互いに認められるようになれれば、私たちはもっと自由になれる」と、英国人女優のエマ・ワトソンは、国連「UNウィメン」のジェンダー平等を目指す取り組み「HeForShe」についてスピーチしたときにこう語っている。つまり、私たちがそれぞれのジェンダーに対する固定観念を捨て、人間として互いを認め合うことができれば、互いのジェンダーにとってより暮らしやすい環境になるはずだ。

東アジア諸国、とりわけ日本において本当の意味での男女平等が訪れる日が来るのは遠いかもしれない。アンケートに回答した東大のある女子生徒も、「あまりに文化に根付いたものなので、どうやって解決できるのか皆目見当がつかない」としている。ご存知の通り、日本は「世界経済フォーラム」による男女平等ランキングで、144カ国中111位と先進国としては驚くべき下位にある。

確かに、日本のような女性にでさえフェミニズムが疎まれる国で女性が声を上げることは、難しいのかもしれない。しかし、文化のせいにしているだけではは前に進めない。私たちは、声を上げるだけでなく、積極的に討論をしながら、この問題がどうしたら解決できるのかを考え続けなければいけない。

張 婉瑜 東京大学3年生

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東京大学3年生

チャン・ワンユー/台湾出身。ニュージーランドのAuckland International Collegeを卒業後、2013年東京大学教養学部前期課程国際環境学コース(PEAK)に入学。

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