パート主婦「130万円の壁」の解消策とは? 配偶者控除の次は社会保険が焦点に
非正規雇用拡大の流れの中で、現在のパート労働者の約3割は、それで生活を成り立たせている「主たる生計維持者」である(厚生労働省調査)。この主たる生計維持者にとって厚生年金や健康保険の適用は「壁」どころか歓迎すべきことだ。なぜなら、これらの保険料は労使の折半負担で有利である。これが適用されないと、より負担の重い国民年金や国民健康保険に加入しなければならない。負担能力の低い非正規労働者の間で国民年金や国民健康保険の未納問題があることは周知のとおりだ。
これまで厚生年金や健康保険の適用は、週30時間以上働くパート労働者を対象としてきた。これが制度改正により2016年10月からは従業員501人以上の大企業に限り、週20時間、年収106万円以上のパート労働者に適用拡大となった。そして2016年末に国会で可決した年金制度改革法案には、労使合意などがあれば従業員500人以下の企業でも同様の適用拡大を行うことが盛り込まれている。言うまでもなく、こうした改革は、主たる生計維持者のパート労働者にとってメリットが大きい。
厚生年金・健康保険の適用拡大が有効
ところが、130万円や106万円をどうしても所得減をもたらす就業調整の壁ととらえてしまう層がある。ほかでもない、パート主婦だ。年収130万円以下の厚生年金非適用のパート主婦は、夫の厚生年金を通じて第3号被保険者となることができる。これは夫に扶養される配偶者として自分では保険料を払わず、将来基礎年金を受給できる制度だ。また第3号被保険者になると、医療保険でも夫の健康保険の扶養者扱いとなり、自分では保険料を払わずに給付を受けることができる。
この第3号制度は、単身や共働きの女性より専業主婦を優遇していると主にキャリアウーマン層から批判されているほか、130万円や106万円でパート主婦が就業調整を行う元凶になっていると、かねて指摘されている。主たる生計維持者とは異なり、第3号の主婦は保険料負担なしで年金、医療の給付を受けられるため、自分が厚生年金や健康保険の保険料を支払うことを忌避するからだ。
実はこの第3号制度の問題を現実的に解消していくには、先の厚生年金・健康保険の一段の適用拡大が有効だと言われている。適用の年収要件が、就業調整が無意味になるほどの低水準まで切り下がっていけば、第3号の主婦はおのずと自分自身の厚生年金、健康保険の加入を選択していくだろうと見られているからだ。
厚労省の社会保障審議会の部会でも過去、何度か3号制度の見直しが議論されたが、技術的な難しさなどもあって結論を得るには至っていない。厚生年金の適用拡大を進めることで3号被保険者を縮小していく方向性だけが確認されている。
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