「逃げ恥ロス」でも恋ダンスが残り続ける理由 「現代的お立ち台」に示したい適度な達成感
「恋ダンス」がノリやすく自然に体が動くダンスであったとしても、自分がこっそり踊ればいいわけで、なぜYouTubeにこれだけたくさんの動画がアップされるのだろう。
YouTubeでは自分のアップした動画に広告を表示させて、その広告視聴数に応じてYouTubeからおカネが支払われる仕組みがあり、この収入を目的に動画をアップしている人たちがYouTuberといわれる人たちだ。
もちろんYouTuberたちも「恋ダンス」や「PPAP」の動画をアップしているが、「恋ダンス」は一般の方がアップしているものが多い。その意味でも「恋ダンス」は広告アフィリエイト収入を稼ぐためともいいにくい。もちろんYouTubeに「恋ダンス」動画をアップすることが流行っているから、と流行追っ掛け型になっているということもあるかもしれないが、もう少し考えてみると、私達がもつ潜在的な心理がみえてくるように感じる。
YouTubeは現代的お立ち台
「恋ダンス」は、しなやかな感じやダンスとあまりイメージのつながらない役者さんが踊っていたり、劇中ではリビングで普段着のままダンスをしていたりと、パッと見ると日常の中で簡単に踊れそうに感じる。
しかし実際に踊ってみると適度に難しい。手首のしなりや手の動き、足のひねりなどなかなか複雑だ。しらべぇ編集部でライターとしても活動する元SDN48の亜希子さんは「恋ダンスは、ポップな見た目に反し、SDN48で1日に十数曲の振り付けを覚えていた私たちですらマスターするのに苦戦しました」と明かす。この適度な難しさは、できるようになると、達成感とそれをアピールしたい気持ちになりやすい。
三代目J Soul Brothersのランニングマンのダンスが流行ったとき、象徴的なランニングマンの部分は多くの方にマネをされたが、全体を通してのいわゆる完コピになるとダンスの強者達のスゴ技競演になってくる。ダンスのレベルが高すぎるのだ。
対してAKB48の「恋するフォーチュンクッキー」は誰もがノリやすいリズムとリズムに優しくのれるダンスで、こちらも多くの一般の人たちのオリジナルに忠実なダンスがYouTubeにたくさんアップされた。
この忠実なマネを少しの頑張りでできるようになる達成感は、YouTube上でアピールしてもいいだろうという自己納得の理由になっていると感じる。
平野ノラさんがバブリーネタで今年ブレイクしたが、彼女のネタであるバブル時代を象徴するものとしてディスコのお立ち台で踊られていたジュリアナダンスがよく使われる。このダンスも思い出してみると、ノリやすいダンスミュージックにジュリセンと言われた大きな扇子をリズムに合わせて波うたせる、さほど難しさを感じさせないダンスだった。
そして、そのダンスをみせるための舞台がお立ち台。YouTubeが無かった時代、見せてアピールするにはお立ち台に上がって見てもらうことは最適の表現方法だったのかもしれない。
ミュージシャンも路上からYouTubeに、お笑いタレントも舞台からYouTubeに、インターネット動画共有サービスは、世界のどこへでも自己アピールができる環境を整えてくれた。
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