青学・原監督が明かす「強いチームの作り方」 常識を疑い、土壌を整え、成長を促す
ビジネスの世界にも同じことがあると思います。新入社員をじっくり育てる余裕もシステムもなく、いきなり現場に投入する。結果が出なければ、「デキない社員」の烙印を押す。上司はそういう社員のミスを恐れて、仕事を抱え込んでしまう。
どう考えても組織にいい影響を与えるとは思えません。そういう組織は、土壌がどんどん枯れていって、やがて芽が出ない畑になってしまいます。だからこそ、強いチームをつくりたいなら、まず目を向けるべきは環境づくりなのです。
目標管理ミーティングで成長を促す
環境づくりのひとつとしてチームに取り入れたのが、選手個々の目標設定と管理でした。利益を追求する企業では当たり前のノウハウですが、私が就任した当時の青学陸上競技部にはありませんでした。
選手それぞれの目標に対する意識が希薄だと、選手は監督の指示に従うだけになります。グラウンドに行っても監督が指示を出すまでその日どんなトレーニングをするのかわからないようでは、競技能力のレベルアップを図れるわけがありません。
青学陸上競技部は、選手個々に目標を設定させるだけでなく、ランダムで5、6人のグループをつくり、目標管理ミーティングを行っています。
ランダムにする理由のひとつは、学年、レギュラー、控え選手、故障中の選手、その区別なくグループをつくることで、お互いの目標を客観的に見直せるからです。それによって、より達成可能な目標を設定できるようになります。
もうひとつの理由は、チームに一体感が生まれるからです。主力選手だけ、故障中の選手だけのグループにすると、どうしてもチームが分断されます。それぞれの立場で、それぞれの思いを知ることで、はじめてチームとしてまとまります。
たとえばどうしても焦ってしまいがちの故障者に、経験者がアドバイスを送るだけで、その選手は安心感を覚えて、無理をせずに回復に努められます。学年が違う部員がそろえば、下級生は目標設定ミーティングの意味を理解するし、上級生は人を指導するリーダーとしての立場を経験できます。
企業でも同じように社員を育成しているはずです。営業成績のいい社員が新入社員の面倒を見ながら、指導者として、営業マンとして成長していく。私はそのノウハウを、目標設定ミーティングとして、青学陸上競技部に導入したということです。
チームが成熟した今の青学陸上競技部では、私が言わなくても部員間で自発的に目標設定ミーティング行っています。誰が監督になっても強いチームとは、このように選手それぞれがやるべきことを理解しているチームです。
青学陸上競技部も、ようやくそういうチームになってきました。個々の成長は、チームの成長に直結する。それを実現するには、業界の常識にこだわらず、時間かけて人が育つ土壌をつくることが欠かせません。
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