テレビの音楽番組はどこへ向かえばよいのか 音楽番組の"今"を探る

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現在日本の総人口は1億2692万人で、50代、60代、70代合計では4785万人。それに対して10代、20代合計では2423万人(2016年人口分布推計)。50代以上の大人のマーケットが圧倒的なシェアを誇っている。とすれば、このマーケットこそが重要なのだということは明白である。にもかかわらず、このマーケットに関して音楽業界はきちんとマーケティングを行ってきていないのだ。このことこそが、音楽業界を迷走させている大きな要因である、と私は考えている。はっきり言ってしまえば、最も大きなマーケットをおさえずしてミュージック・ビジネスが成り立つはずがないではないか、ということである。

時代が必要とする歌がヒットする構図は変わらない

音楽業界でも、構造改革が進みつつある。

ミュージック・ビジネスの流れはパッケージからノン・パッケージに移ろうとしている。これは世界的な傾向であり、これからはその主力ともいうべき音楽配信を抜きにしてミュージック・ビジネスは成立しない、といっても過言ではない。同時にアナログからデジタルへという流れも加速している。その意味では、新しいミュージック・ビジネスにとっては、音楽配信とデジタルが両輪だ、ということだ。

音楽業界の潮流は、これまで以上に加速度を増していくことだけは間違いない。だからこそ、そんな時代の波をいち早くキャッチして、自分ならではのスタイルを確立してニュー・ウェイブを乗りこなさなければならない。まさに新しい波をとらえて乗れる新しいサーファーが必要とされているのだ。

しかし、どんな音楽技術や売り方の手法が出てきても、変わらないことがひとつだけある。それは、時代が必要とする歌がヒット曲となり、時代に選ばれたアーティストがスターになるということだ。ということは、今の時代をどうとらえるかが重要だが、それができていないからこそ、時代が必要としている歌を生み出しヒットさせられないのである。

歌は今、〈大人の歌〉と〈若者の歌〉に二極分化してしまっている。若者向けのJポップは若者たちには必要とされているが、大人たちには必要とされていない。逆に大人の歌は大人たちには必要とされているが若者たちにはそうではない。つまり、ここに時代を超え世代を超えた〈流行歌〉が生まれない大きな要因があるのである。だからこそ、私は二極分化を尊重しつつ、それぞれが頑張るしかないと思っている。

若者たち向けのJポップは生まれている。しかしマーケットが縮小しているぶん、かつてのような売上げは見込めない。また、若者たちはCDよりも音楽配信を求めているのであまり期待はできない。そこでAKB48のように握手券を付けてCDを売るという戦略を考えて実を取っている。これはCDを売るということでは立派である。つまり、ミュージック・ビジネスとしては評価できるということだ。しかし、「ソングス(歌)」となると、いかがなものかとなってしまう。

一方、大人のマーケットのほうは、〈大人の歌〉を聴きたいというたくさんの人たちのニーズに応えきれてはいない。50代以上の大人たちは、60年代、70年代、80年代に青春時代を送った人たちで、LPやドーナツ盤、CDで音楽に親しんでいるので、今でも大人の歌をCDで聴きたいと思っている。しかし、そんな期待に応えてくれないので、しかたなくかつてのヒット曲を集めたコンピレーション・アルバムで我慢しているのである。CDで〈大人の歌〉を聴きたいと思っている大人のマーケットに、しかるべき作品を届けることが重要なのだ。

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