テレビの音楽番組はどこへ向かえばよいのか

音楽番組の"今"を探る

これまで、CD購買者層は主に中学生から20代の、いわばヤング・マーケット層だった。小室哲哉の活躍以降、歌の対象が低年齢化したこともあり、特にこの層がCDを待っている「漁場」だった。だから、釣り人であるレコード会社は、漁場でエサをぶら下げて待っていれば、自然とCDは売れていたのだ。ところが、少子高齢化でいつの間にか、この漁場は魚の数が減ってしまった。そのうえ、魚たちの好物は多様化してしまった。これまでは音楽を筆頭に映画、車、ファッションぐらいだったが、ゲーム、携帯電話などのモバイル、パソコン、インターネットなどが加わった結果、音楽というエサにこれまでのように無条件では食いつかなくなってしまったのである。

この現実を正確に把握している釣り人は何人いただろうか。昔ながらに同じ場所で、同じ釣り道具を使い、同じエサをつけて糸をたらしていた。正直言って、これでは釣れるわけがない。

マーケットの変化に対応できない音楽業界の迷走ぶり

漁場の変化を示すデータがある。アメリカのCDマーケット・シェアは、1999年に40歳以上のエルダー・マーケット層が、15歳から24歳のヤング・マーケット層を逆転したというのだ。2001年の両者の比率は34%対26%と差が開いた(出典=国際レコード産業連盟)。ドイツも同じ。となると、日本もそうなりつつあるのだと推測することができたはずだ。

いや、その時点でその傾向をいち早く取り込んだ商品が顕著に売れるようになっていた。コンピレーション・ブームだ。往年のヒット曲を集めたベスト・アルバムが人気を博したのだ。

洋楽から始まったこのブームは2002年、『Kiss』『TEARS』のヒットで邦楽にも飛び火した。主な購買者層はアメリカと同じように40歳以上だった。今や魚たちが口をあけて待っているのはこの漁場なのだ。

そんな趣旨の私のコラムがユニバーサルミュージックの石坂敬一会長(当時)の目に止まり、2009年の3月から5月まで同社が主導する〈Age Free Music〉キャンペーンがスタートした。このキャンペーンに加わるレコード会社が増えて、すぐさまレコード会社16社合同キャンペーンとなり10回続いた。このキャンペーンができたのはレコード会社間において共通の危機意識を持てたからだ、と私は思っている。

音楽業界は長く若い世代をターゲットに成功を収めてきた。しかし、パッケージからデジタルへの流れが表れ、少子高齢化を含めた環境の変化により、市場が縮小してきた。若年層は音楽配信主体だが、CD売り上げの減少をカバーする成長は見られず、停滞気味だ。音楽市場の先行きに対する業界の危機感も募る一方だ。そこでふと気づくと、かつて音楽を愛好していた世代が年を重ね、大きな潜在市場になっていたのだ。

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