「固定残業代含む求人」がはらむ4つの問題点 効率的で働きやすい職場環境には逆行する

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ここまで説明してきたように、固定残業代は、悪質な求人の手段にされるというデメリットに加え、会社の労務管理に関するさまざまな問題点をはらんでいる。

確かに、すでに固定残業代が導入されてしまっている場合、賃金体系の変更には労使の合意が必要であり、就業規則の改定や給与計算ソフトの設定変更なども必要なので、今すぐに固定残業代をなくす、ということは難しい。資金繰りなどの事情から、やむなく固定残業代を導入している会社もあるだろう。

私も「直ちに固定残業代」を全廃すべき、という理想論を主張したいのではないことは付言しておきたい。

労働環境を働きやすいものにしていくためには

たとえば、スタートアップ企業で、まだ経営基盤が整っておらず人件費にかけられる予算も限られているため、労働者と合意のうえ、本来基本給であるべき賃金の一部を、最低賃金を割らない範囲で固定残業代にするという状況はありうる。

だが、会社の成長に合わせ、昇給時に、固定残業代を減らして基本給を厚くしていくような、将来に向かって固定残業代および、それと表裏一体の関係にある残業をなくしていくことは、会社の目標として求められる。要は、固定残業代という「カンフル剤」に頼って残業を容認するのではなく、「残業はゼロに近づけることが望ましい」という認識を経営者が持つことが重要ということである。

日本の労働環境を働きやすいものにしていくためには、将来に向かって「固定残業代」という考え方はなくしていったほうが良いものであることを、労働行政関係者、経営者、労働者、そして私たち社会保険労務士も、共通認識として確認しておきたいものだ。

榊 裕葵 社会保険労務士、CFP

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さかき ゆうき / Yuki Sakaki

東京都立大学法学部卒業後、上場企業の海外事業室、経営企画室に約8年間勤務。独立後、ポライト社会保険労務士法人を設立し、マネージング・パートナーに就任。会社員時代の経験も生かしながら、経営分析に強い社労士として顧問先の支援や執筆活動に従事している。

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