「固定残業代含む求人」がはらむ4つの問題点 効率的で働きやすい職場環境には逆行する

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さらには、固定残業代を支払っている人が休日出勤して、平日に代休を取得したような場合、代休1日分は不就労控除されるが、休日出勤は固定残業代で吸収されるので、「休日出勤したのに総支給額が減る」という不思議な現象も起こってしまう。

実は固定残業代を導入すると、次から次へ給与計算の疑問点が出てきて、給与計算が複雑怪奇になってしまい、給与計算担当者の残業を誘発してしまうという本末転倒な結果にもなりかねないのである。

私自身も、社会保険労務士実務家として労働相談を受ける中で、少なからずの固定残業代を導入している会社の給与明細を見てきたが、正しく固定残業代の計算ができていた会社は半分以下、という肌感覚である。

「時間数や金額を特定せずに基本給に残業代が含まれていると認識してしまっている」「通常の時間外割増は良いとしても、休日割増や深夜割増が考慮されていない」「欠勤控除で固定残業代も日割り控除したため、残業代が不足していた」など、程度の差はあれ、何らかの問題が発生していて、固定残業代を含んだ給与計算を正しく行うのは至難の業であるということを実感させられている。

長時間労働が見過ごされるリスク

第3の問題点は、健康管理の視点における労働時間の管理が見落としてしまうおそれがあるということである。

世間一般的にはまだまだ認識が弱いが、会社が労働者の実労働時間の集計を行う義務を負っている理由は、決して残業代を計算するためだけではない。

社員の働きすぎを防ぐという健康管理上の理由においても、労働時間の集計は非常に重要な意味合いを持っている。長時間労働を防ぎ、社員の健康を維持管理するための労働時間の管理は、労働契約に付随する会社の安全管理義務の一部であるし、労働基準法や労働安全衛生法でも求められている。

固定残業代を導入した結果、経営者が「どうぜ固定だから、残業時間に集計は必要ない」とか「固定残業代の枠内に収まっていれば、どれだけ長時間勤務であっても問題はない」といったような誤った認識を持ってしまうと、労働時間の管理をおろそかにしてしまい、その結果、長時間労働が見過ごされるというようなことも、発生する可能性の高いリスクである。

前述した北海道のホテルの裁判例でも、裁判所は形式的には固定残業代で残業代は合法的な額が支払われているが、「安全配慮義務」の観点を重視して、45時間分の固定残業代しか認めなかったことを、ここで再度思い出していただきたい。

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