「固定残業代含む求人」がはらむ4つの問題点 効率的で働きやすい職場環境には逆行する

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第4の問題点は、会社の労務管理の弱体化につながりかねないということである。

仕事が遅い社員やダラダラ会社に残っている社員ほど残業代を稼ぐから不公平」という理由で固定残業代を導入するケースも見られるが、このような考え方は、表面的な解決にすぎない。仕事が遅い社員を早くできるように指導したり、無意味に残業している社員を帰宅させたりするのは経営者や管理職の役割である。

仕事が遅い理由が能力不足であれば再教育したり、能力見合った仕事に配置転換したりなどの策を執ればいいし、所定労働時間中に頻繁にタバコを吸いに行っているから残業になっているのであれば、勤務態度を改めさせたほうが良い。

いくら教育指導しても、勤務態度が改まらずダラダラ残業をしていたり、明らかに能力や協調性の不足により自身やほかの社員の残業を誘発する要因になったりしている社員は、解雇という選択肢も視野に入ってくる。本人に対する教育指導や警告を尽くしたうえであれば、我が国の判例においても解雇は認められている。

競争力がある会社をつくるためには、社員の待遇上の不満を解決するために固定残業代を導入して表面上だけ帳尻を合わせるよりも、教育や配置転換などの労務管理による根本対策を打つことが断然望ましい。あるいは、業務効率を上げるためのIT投資なども考えられよう。

「モーレツに働く」から180度経営方針を転換

この点に関し、最近私が印象に残ったニュースを1つ紹介したい。

日本電産の永守重信社長が10月24日の決算説明会の場で、2020年までに社員の残業をゼロにする構想を明らかにしたということだ。私は、永守社長個人や、日本電産という会社に対し、正直「モーレツに働く」という印象を持っていたが、180度経営方針を転換したのである。

日本経済新聞は、永守社長のコメントとして次のように報じており、すでに成果も出始めているようである。

「私が早く帰るように働き方を変え、生産性を上げるために必要な機器やソフトにはどんどん投資をしている。あっという間に残業が3割以上減った。一方で利益は上がっている。浮いた残業代の半分は冬の賞与で還元し、半分で英語や専門分野の教育を充実する。」(2016/11/9 3:30 日本経済新聞 電子版)

正面から業務効率の改善に取り組み、社員にも還元していこうという姿勢は、固定残業代で帳尻を合わせるような小手先の考え方とは一線を画するすばらしい姿勢である。

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