日ロ首脳会談で「不気味な時代」の幕が開ける アジアはついに軍拡の時代に突入

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一方で中国の東アジア支配を恐れる日本としても、ロシアが新たなアジアの友人になるのならば歓迎したいところだ。

 ロシアのウクライナ侵攻に伴う西側諸国の対ロ経済制裁に参加した日本にとって、ロシア極東地域への投資はこれまで、不可能ではないにせよ、難しいことではあった。

しかし、ドナルド・トランプ氏が米大統領に選出されたことで対ロ制裁は緩和ないし撤廃される公算が出てきた。安倍首相が外国の首脳としては初めて11月17日にニューヨークでトランプ氏と会談した理由は、この点からすれば説明がつく。

米大統領選でヒラリー・クリントン氏が勝利していたならば、安倍首相はプーチン大統領との会談にさほど成果を期待できなかっただろうが、両者はいまや、北方領土問題や経済協力に関して交渉する余地を広げた。両国間で定期的な首脳会談を行えるようになるかもしれない。

だが、これは安倍首相にとっては残念賞に過ぎない。オバマ氏がアジア戦略の中軸としてきた12カ国の環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)は、トランプ氏当選で葬られるのが確実となった。

安倍首相はTPPを、中国によるアジアの貿易支配を妨げる手段と見て支持してきた。TPPがなくなれば、中国が通商面で支配的な役割を果たそうとするのは確実であり、日本にとっては大きな損失となる。

また、トランプ氏が選挙期間中に主張していたように、日本や韓国などの同盟国に自国防衛負担増大を求めれば、日本にはさらなる痛手となろう。

トランプ氏が台湾との連携を強化するとともに、従来の米国の「1つの中国」政策への疑念を示して中国を刺激し続ければ、東アジア地域の緊張は高まるだろう。その結果、中国が領有権を主張している東シナ海の尖閣諸島などをめぐって、日本の防衛ニーズは増大することになる。

9条改正の行方は?

このため安倍首相は政治的な危機に直面しているが、チャンスも到来した。トランプ氏当選とアジア地域での緊張の高まりは、憲法9条改正という究極の政治目標を達成する上で、完璧な口実となり得るからだ。

安倍首相は、この目標を達成するに足る議会の支持を得ており、来年早々とも見られる次期衆院選で一段と勢力を拡大できるかもしれない。だが、憲法改正には両院の3分の2以上の賛成と、国民投票での勝利が必要。唯一の被爆国である日本では平和主義が根強く、達成は簡単ではなさそうだ。

国家主義者とも評されている安倍首相は、ハワイでオバマ氏と握手することを通じて、近代的な平和主義の信念に同意し、戦争の危険さを痛感している姿勢を示す。

そうした平和的な態度によって安倍首相が、真珠湾攻撃から75年を経て、東アジアでの緊張の高まりを背景に軍備を拡張する時期に来たのだと日本の有権者を説得できるかどうかは不透明だ。今後数年間は不安定とみられるアジアの政治にとって、この点は中心的な問題となるだろう。

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