ベネッセは「デジタル路線」から転換できるか 半年で3人の社長が登板、迷走を止められるか

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10月からベネッセHDの社長に就任したのは、米投資ファンド・カーライルの日本代表として著名な安達保氏だ。安達氏は今後、ベネッセをどう経営していくのか。東洋経済の取材に答えた。

最大のミッションは経営人材の育成

安達 保(あだち たもつ)/東京大学工学部卒。米マサチューセッツ工科大学にてMBA取得。 三菱商事、マッキンゼー・アンド・カンパニー、GEキャピタル・ジャパンを経て、20 3年からカーライル・グループに参画。2016年10月から現職(撮影:梅谷秀司)

毎週月曜日には、社員全員にメールを出す。内容は現場の社員と話して感じたことや、外部で聞いたベネッセのよい評判など。返信もウェルカム。社員に身近に感じてもらいたいからだ。

社員からは「社長と話ができてうれしい」という声があった。「(創業者・福武哲彦氏が企業理念について記した著書)『福武の心』について社長はどう思うか」というまじめな質問や、「こんなアプリを作ったので見に来てほしい」という提案もあった。「社長は雲の上の存在で、会ったこともしゃべったこともない」という人が多い印象だ。

社長としての最大のミッションは、人材を育成すること。各事業のトップには現場業務に精通した人がなっている。ただ、経営者の立場で、全社的な戦略を考える訓練を受けておらず、経営を担う人材が圧倒的に不足している。

私がやろうとしているのは、経営を担うトップ100人を育成すること。すでに人事担当者とともに考え始めている。次の社長は当然、内部の人がなったらいい。サポートする経営幹部も皆社内で育ってきた人、という姿が望ましい。

私が投資ファンドのカーライルで手掛けた案件は、売上高1000億円以下の中堅企業が多かった。ベネッセは売上高4000億円超、従業員2万人の大きな会社だが、分解してみると進研ゼミ、学校、介護など、1つの事業単位は1000億円前後の事業が多く、各事業に大きな権限を委譲している。

カーライルでは12社に投資をしていた時期もあり、複数の事業を経営するという点では、これまでとの大きな違いは感じていない。今後は従来の教育、介護に加えて、もう1つ大きな柱になるような大規模な買収もやりたい。

カーライルはファンドの特性から、相当の短期間で業績を立て直す必要があり、いったん非上場化して変革を行ったうえで、再上場するという手法を取ったこともある。

ただベネッセの場合は、そうしたこと(戦略的非公開化)はまったく考えていない。社会的な意義のある会社は、やはり世の中に知られている必要がある。この考えは当然、創業家も理解していると思っている。

平松 さわみ 東洋経済 記者

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ひらまつ さわみ / Sawami Hiramatsu

週刊東洋経済編集部、市場経済部記者を経て、企業情報部記者

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