社長はシャープ出身 鴻海子会社の狙い

脅威論に対し、日本企業との共存共栄を強調する。

鴻海がシャープと資本業務提携交渉を進めたのも、ディスプレー技術が狙いだった。しかし、子会社の堺工場への出資は実現したが、株式取得価格などで折り合わないまま、シャープ本体への出資は頓挫した。両社の接触は続いているが、交渉には至っていない。それだけにフォックスコン日本技研の設立は、鴻海がシャープ出資を完全にあきらめた証しのように見える。実際、「シャープへの出資がなくなった場合に補完する役割もある」と矢野社長も認める。

日本人技術者を獲得し、鴻海が独力で最先端のディスプレーを内製化してしまえば、日本勢、シャープはもちろん、ジャパンディスプレイにとっても脅威になる──との声が業界の一部から上がっている。

日本企業の敵か味方か

「日本企業とはあくまで共存共栄でいきたい」。日立製作所出身の後藤順副社長は、鴻海脅威論に対して反論する。「冷静に考えて、今やディスプレーは儲かる事業ではない。鴻海が日本に研究開発子会社を設立するのは、何より歴史的に日本に愛着があり、日本企業と手を組みたいという思いがあるから。シャープとの提携交渉の際も、郭台銘董事長は鴻海社員に対して『われわれは仲間、どちらが上か下かでなく、謙虚な気持ちで交渉に当たろう』と言ったというが、本心だろう」。

矢野社長はシャープと鴻海の提携の可能性はまだ残っていると話す。「今後の成長戦略を考えたとき、両社が手を組むのは自然な流れ。シャープのディスプレー技術は鴻海のプラスになる。家電や複写機で新興国を攻略する必要があるシャープに対し、鴻海は新興国での生産力、部品の提供力などで貢献できる」。

矢野社長自身、「交渉の前面に立つつもりはない」と言うが、社長を任された経緯については、「かつて台湾で一緒に仕事をした人が鴻海にいる。シャープ出身の私なら懸け橋になると思ったのでは」と話す。「鴻海側の窓口にシャープ出身者がいれば交渉しやすい。矢野さんなら液晶の技術の話もできる」とシャープ内部からは期待する声も上がっており、今後、両社の関係修復においても役割を担う可能性がある。

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