フランス人の結婚観が実は「超堅実」なワケ

「半分以上が婚外子」にはカラクリがあった

そこで、法律婚とPACSの違いをもう一度チェックしてみました。結婚においては、①共同生活、②扶養、③生活費分担、④連帯債務負担、そして⑤貞節の義務があります。PACSは、①と④は法律婚と同じで、②と③の代わりに、世帯の出費を分担し、失業や病気の際に援助する相互扶助義務があり、そして⑤がありません。

なるほど、PACSには貞節の義務がないのです。当然といえば当然ですが、結婚とは、ただ1人のパートナーの前に貞節を誓う、厳しい茨の道なのです。それでも、“永遠”の愛を誓う上では、それなりの覚悟がいるに違いありません。ファッション・デザイナーのココ・シャネルは「男がほんとうに女に贈り物をしたいと思ったら、結婚するものよ」と語ったそうですよ。

「バツ」がついても、結婚した事実こそ勲章

こんな話も聞きました。ドンファン気取りの独身主義者より、バツがついいても結婚した事実がある方が勲章持ちだ、と。たとえそれが続かなかったにせよ、1度は永遠の愛を夢見たからこその結婚――それだけの愛をパートナーとの間に持ち合って、選び選ばれたことは事実です。これは存外、重要なことかもしれません。

貞節の強制は、今や昔のものとなりました。今どきのカップルの形態であるPACSで、義務として掲げられはずもありません。しかし、義務ではなくとも、本人同士の内的強制すらなければ、恋も愛もいったいどこに喜びがあるというのでしょう。

小倉百人一首の歌にもあるように、恋とは「逢ひ見ての のちの心にくらぶれば 昔はものを思はざりけり」なのです。それが、「しのぶれど 色に出にけりわが恋は ものや思ふと人の問ふまで」となってしまいます。耐え忍んだ果ての恋、それが成就した末の結婚なのです。貞節の義務もないような愛情は泡のないシャンパン、砂でも噛んだほうがよっぽどいい、ということなのでしょう。

エロスとは、自由でオープンな青空の下の恋愛にあるよりも、互いを束縛し、束縛されることを許諾する、婚姻の夜の闇に蠢(うごめ)いているのです。

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人間は結婚する以前から、誰でもそのことを遺伝子的に知っています。だから、不倫を「蜜の味」といい、人妻や既婚者がモテる要因ともなっているのではないでしょうか。

愛する人の愛が他人の占有物であって、そのエロスは窺えない。となれば、奪わなくてはならない。愛を奪い、エロスを断ち切る。二重三重に軋(きし)む罪の意識が、倒錯した喜びを刺激する、それが蜜の味なのでしょう。

その愛をけっしてセンシュアルとは言えないとしても、思いを秘めて外に表さなければ、“凄み”に転化して、成熟した大人の凄艶さともなるのです。

不倫と婚外子が氾濫する、自由恋愛でフリーセックスの“放埓な国”と思われていたフランスは、内実をよく観察すれば、わが日本とさほど変わることのない、法律上の結婚を重視するフツ―の国であったのです。

しかし、のっぺらぼーで障害物のない、たんたんとした道を歩くことが、いいとは思えません。鈍い感覚からはロマンも愛も生まれないからです。センスを鋭く磨き上げる、パートナーを喜ばせて幸せを互いのものとする…。アムールは、そこから始まるのです。

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