こうした点で米国が冷静かつ堅実な役割を続ければ、今後も国際社会から必要とされるだろうし、トランプ政権への評価も変わるだろう。
ビル・クリントン元大統領は辞任直後、私的に(決して公的にではなく)、米国は「世界における絶え間ない勝者であり続けるため、偉大で比類のない経済力と軍事力を使う」ことができる、と語ったという。
しかし、よりよい選択は、「世界的な勝者ではなくても、人々に快適な生活を提供できる世界を作り出そうと努める」ことだ。こうした言葉は米国の高官にとっては好ましくはないだろうが、これこそがアジア各国が聞きたい言葉である。
米国のリーダーシップはもはや期待できない
今回の米大統領選挙で明確になったのは、豪州を含むアジア地域の同盟国にとって、もはや米国によるリーダーシップを当然のように期待することができなくなったことだ。アジア諸国は米国に協調しようとはしても、依存することは避けるようになるだろう。
トランプ氏はおそらく米国の同盟国の中で豪州に本能的な同情を示すはずだ。よきにつけあしきにつけ、過去1世紀にわたる戦争で米国側に立ち続け同盟の対価を支払ってきたからだ。現在でもアングロスフィア(同様の文化や価値観を持った英語圏諸国)の一員として、トランプ氏の側にいる。
しかし、豪州はその領域から外れたほうが、快適さを享受できるかもしれない。
私は豪州が米国との同盟関係を解消すべきとまでは言わないが、豪州は米国の政策と行動に対して、過去数十年間よりも懐疑的にならなければならない。加えて自主性を強め、日本や韓国、インド、隣国インドネシアとの緊密な貿易・安全保障関係の構築をより優先すべきだ。
米国も過去、ベトナム戦争やイラク戦争といった間違いを犯した。トランプ氏が今後正当なハードパワーを行使することは期待しにくい。それでもアジア諸国と尊重し合える安全保障の枠組みを構築できれば、互いに恩恵を享受できるはずだ。
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