東芝、新トップが挑む“3つの課題" 田中久雄社長ロングインタビュー
――佐々木前社長の4年間は、トップライン(売上高)を伸ばすというよりも採算重視の戦略を採られていました。田中さんの方針は?
佐々木前社長は、2008年に起きたリーマンショック直後の09年に就任されました。当時は世界中の企業がそうとう影響を受けた状態で、東芝も体質改善に向けて3000億円を上回る固定費削減を行った。09年度にV字回復を果たし、このまま順調にいくかなと思ったら3.11(2011年3月11日の東日本大震災)が起きた。超円高も深刻でしたし、欧州の金融危機やタイの大洪水などもあり、環境は最悪でした。
佐々木前社長は東芝を景気変動の影響を受けにくい事業構造に変え、BtoB領域の拡大を進めようとしました。満足できるかどうかは別にして、東芝は悪い環境でもある程度の利益が出せるような体質になりました。その成果は今、出てきていると思います。
一方で企業は成長しなければいけない。円高という要因はありましたが、東芝の売上高規模はずっと下がってきています。私は攻めの戦略、成長の実現に力を入れていきたいと思っています。今までも成長領域、方向性の合った事業ではM&Aをやってきたつもりですが、今後も条件が合うものがあれば従来どおり積極的に進めたい。
もちろん財務基盤の問題もあります。単に買ってきて足し算するのではなく、いかにシナジーを生み出せるかががポイント。二律背反のようですが、成長しながら財務を毀損しない、むしろ強化するようなM&Aを考えていきます。
「すべての執行責任は私にある」
――2月の社長交代会見で西田会長は2期連続で減収が続いていることを問題視し、「成長戦略」を繰り返し強調していました。今後、西田会長とはどう連携して戦略を練っていくのですか。
すべての執行責任は社長兼CEOの私にあります。社内の人間あるいは経営幹部はみんな、非常によくわかっていることです。一つひとつの執行に対して、「こうしろ、ああしろ」という指示は、いわゆる取締役や取締役会からは受けません。
一方で、取締役会は執行を監督する株主側の視点で監督する責任と役割があります。執行がうまくいっているかどうか、ちゃんと制御できているかの監督責任を取締役の会長、取締役会が持ちます。執行側と監督側は明確に分かれているので、社長が執行する一つひとつに指示を受けることはないと思っていますし、これまでもありませんし、今後もありません。
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