東芝、新トップが挑む“3つの課題" 田中久雄社長ロングインタビュー
従来のパソコンは、BtoB領域に力を入れます。ここ数年は安易にボリュームを稼ぐために、BtoC側、コンシューマーに注力しすぎていました。米デルや米ヒューレット・パッカードは、かなりBtoB向けが多い。一方で東芝は非常に少ないので、BtoB領域でまだまだ伸ばせる。
パソコンの場合、単に文字入力してネットにつなぐだけでは差異化できません。東芝ならではのパソコン技術を使って何ができるかを考えて、BtoB向けのソリューションで事業展開を行っていきたい。コンシューマーに比べると利益率もまあまあいいので、利益体質を確保しながら継続的に安定的な数量を目指したい。市場が減るといっても、まだ年間2億台弱の大きな市場がありますので、復活させたいと考えています。
――パソコンは残存者利益を狙い、シェアを増やしていくと言うことですか。
そうなればいいですが、撤退する企業があっても、中国メーカーがものすごい勢いで増えています。パソコンで残存者利益を稼ぐようなビジネスモデルは、まだ早い気がします。われわれ東芝は1985年にラップトップを世界で初めて開発した歴史があります。当社ならではの付加価値のついたパソコンを世の中に続々と出し、結果としてシェアが伸びる形にしたいと思っています。
――成長路線を目指すのであれば、ある程度の利益を犠牲にする必要が出てくるのでは?
利益を犠牲にするつもりはありません。新しい創造的成長は、すでにある技術がベースになります。足りない技術は、M&Aをやる場合もありますが、基本的には持っている技術、開発している技術を組み合わせる、あるいは融合することで新しいビジネスをやっていくことになります。
利益を犠牲にしなくても、新しいビジネスの創出、新市場の開拓はできると思っています。それができたらさっさとやれよと言われるかもしれませんが、二律背反をやりたいと思っています。そのためにも技術資産、知的財産をフルに活用したい。
「縮小しながら雇用確保、新事業創出は難しい」
――それは、西田会長の強い思いを汲んでのことですか。
それは関係ないです。私自身の思いです。業績を見ると歴然とわかりますが、リーマンショック後の08年秋から09年前半は東芝グループ含め全世界が苦しかったですが、それ以降の10年度、11年度、12年度を見ると、円高もありますが当社は売上高が落ちている。縮小しながら雇用を確保し、新事業を創出することは難しいと思っています。
企業はつねに成長をしながら雇用安定、収益基盤、それから財務基盤を強化するのが理想の形です。会長から言われたことはないし、もしかすると会長は違うことを考えているかもしれませんが。
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