不必要なモノをお客さんに買わせる「魔法」 「おみやげ」にすれば商品はまだまだ売れる!

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「必要なモノ」になっている作品とは何だろう?

さっそく答えを言うけど、「おみやげ」だと思う。

シンガポールのマーライオンのキーホルダー。あれ、いる? あんまりいらないよね。でも、買う人がいるわけだ。しかも、かなりの数。

たとえば、広島・宮島で売っている「宮島」と書かれたぺナント(三角形のやつ)。あれ、いる? でも、僕は小学校の修学旅行で宮島に行った時に買っちゃった。おみやげは1000円までだったから、大半をぺナントに使ってしまった。あとは木刀。

演劇のパンフレットもそう。1400円の分厚い小説を買うのは渋るくせに、20ページぐらいしかない2000円のパンフレットには手が伸びる。

キーホルダーもぺナントもパンフレットも「作品」には違いないが、「おみやげ」である。

皆、「作品」は買わないが、どうやら「おみやげ」には手が伸びる。

「おみやげ」が、思い出を残しておくために”必要なモノ”だからだ。

ならば、売りたい作品を”おみやげ化”してあげればいい。

僕が電子書籍に興味がない理由

『魔法のコンパス 道なき道の歩き方』(書影をクリックすると、版元のサイトにジャンプします)

おみやげ化に必要なのは、思い出作りで、思い出作りに必要なのはシンガポールや宮島や演劇といった「体験」だ。絵本を売りたければ、その絵本が「おみやげ」となるような体験を作ってあげればいい。

そこで、これまで3作分の絵本の原画(約140点)を無料でリースし、全国のどこの誰でも『にしのあきひろ絵本原画展』を開催できるようにした。

条件は「原画展の出口で絵本を販売すること」、ただそれだけ。

吉本が保管している絵本の在庫を持ちだした場合の売り上げは吉本に収められる(そのかわり、1冊も売れなくても主催者は1円も支払わなくてもいい)。

中には、絵本を7掛けで購入して、絵本で売り上げを出される主催者さんもいる。

どちらを選んでもイイ。

「無料でリースするから、原画展をしたい人はいつでも言ってねぇ~」とツイッターで募集をかけたところ、大分のサラリーマンが、名古屋の中学生が、横浜のOLが次々に手を挙げた。そして狙いどおり、絵本は「おみやげ」として売れた。

今、僕の絵本は本屋で「作品」として売れ、いろんな土地で誰かが開催している原画展で、「おみやげ」として売れている。

2015年は原画展だけで数千冊売れた。毎年続けていけば、なかなかバカにならない。

僕が電子書籍に興味がない理由が、まさにこれ。

今、時代は「体験」を求めていて、僕はライブや個展といった「体験」を頻繁に仕掛けるので、そういった運動の落とし所を作品にする場合、「おみやげ」になりにくい作品には興味がない。

僕にとっては、本が”物質”であることに大きな意味があるんだよね。

西野 亮廣 絵本作家

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にしの あきひろ / Akihiro Nishino

1980年、兵庫県生まれ。1999年、梶原雄太と漫才コンビ「キングコング」を結成。活動はお笑いだけにとどまらず、3冊の絵本執筆、ソロトークライブや舞台の脚本執筆を手がけ、海外でも個展やライブ活動を行う。また、2015年には“世界の恥”と言われた渋谷のハロウィン翌日のゴミ問題の娯楽化を提案。区長や一部企業、約500人の一般人を巻き込む異例の課題解決法が評価され、広告賞を受賞した。その他、クリエーター顔負けの「街づくり企画」、「世界一楽しい学校作り」など未来を見据えたエンタメを生み出し、注目を集めている。2016年、東証マザーズ上場企業「株式会社クラウドワークス」の“デタラメ顧問”に就任

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