「大戸屋」はなぜ「やよい軒」に勝てないのか? お家騒動より深刻な"低収益"という問題点

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大戸屋が上場後、長年にわたってぱっとしない業績で推移してきた一方で、急激な成長を続けているのが「やよい軒」だ。持ち帰り弁当「ほっともっと」で著名なプレナスが運営する定食チェーンで、1989年に「めしや丼」という名前で1号店を出店。2006年に業態名を現在のやよい軒に転換した。

中食のノウハウを生かす「やよい軒」

数年内には大戸屋の店舗数を超えると見られる「やよい軒」(記者撮影)

2016年2月期の業績は売上高284億円、営業利益は13.6億円で、全国に直営主体で297店を展開しており、収益性では大戸屋を凌駕する。業界関係者によれば、「強みは持ち帰り弁当の基盤を生かした経営にある」という。ほっともっとは全国に約2700店を展開しており、やよい軒は「中食で培ったノウハウを、外食に応用している。食材の共通化や配送費などのコストを抑えているから、成長できるのだろう」(業界関係者)。

客単価は750円程度で、大戸屋の約850円よりも安めだ。かつて大戸屋が600円台の定食が中心だったのに、健康志向や高品質をうたって800〜900円台のメニューを増やし、女性客の取り込みを図ったのに対して、やよい軒は価格を抑えたままだ。「首都圏はまだしも、地方では定食に高い値段は出せない。定年した団塊の世代など、時代のニーズをうまく掴んだ点が評価されているのだろう」(業界関係者)

初期費用も抑えている。「やよい軒」の出店初期費用約4300万円なのに対して、大戸屋は本格的な調理をするため、広い厨房と高額な器具を揃える必要がある。新規に出店する場合に必要な費用は6000~7000万円、郊外ロードサイド型店舗だと8000万円ほどになる。

投資費用や収益性で上回るやよい軒は年間40〜50店近くの出店を続け、2020年に500店体制を目指している。大戸屋の出店が計画通りにいかなければ、店舗数で逆転される日も遠くない。

かつて、窪田社長は「お客様が喜んでくれるのであれば、薄利でも良いものを出していくことが、大事なことだと思っている 」と語っていた。

創業家との経営権をめぐる問題に加えて、長年にわたって続く収益性の問題、そして同業他社からも追撃を受けている。大戸屋が抱える問題は深刻さを増している。

常盤 有未 東洋経済 記者

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ときわ ゆうみ / Yuumi Tokiwa

これまでに自動車タイヤ・部品、トラック、輸入車、楽器、スポーツ・アウトドア、コンビニ、外食、通販、美容家電業界を担当。

現在は『週刊東洋経済』編集部で特集の企画・編集を担当するとともに教育業界などを取材。週刊東洋経済臨時増刊『本当に強い大学』編集長。趣味はサッカー、ラーメン研究。休日はダンスフィットネス、フットサルにいそしむ。

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印南 志帆 東洋経済 記者

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いんなみ しほ / Shiho Innami

早稲田大学大学院卒業後、東洋経済新報社に入社。流通・小売業界の担当記者、東洋経済オンライン編集部、電機、ゲーム業界担当記者などを経て、現在は『週刊東洋経済』や東洋経済オンラインの編集を担当。過去に手がけた特集に「会社とジェンダー」「ソニー 掛け算の経営」「EV産業革命」などがある。保育・介護業界の担当記者。大学時代に日本古代史を研究していたことから歴史は大好物。1児の親。

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