「大戸屋」はなぜ「やよい軒」に勝てないのか? お家騒動より深刻な"低収益"という問題点

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「この数字は最低限やらなくてはならない数字」(窪田社長)という。だが、計画を達成するためにはお家騒動以上に高いハードルがそびえ立っている。

最大の問題は、大戸屋の店舗運営のまずさにある。ほか外食チェーンと異なり、大戸屋は食材の加工を集中的におこなうセントラルキッチン(工場)を持たず、店舗で食材の仕込みや調理を行うことをウリにしてきた。この店内調理に”こだわり過ぎている”点が問題の元凶になっている。

問題は"すべて店内調理"という発想か

チェーン店として、店内調理にこだわっていることが収益性が改善しない要因となっている(撮影:尾形文繁)

大戸屋は38種類の定食に加えて、期間限定メニュー、デザートなど、常時50前後のメニューをそろえている。店舗によって違いはあるが、おおよそ朝11時の開店から22時前後の閉店までを通じて提供する必要がある。

「開店前の仕込みには非常に時間がかかる。定食を調理するのにも時間かかり、デザートなどの注文が途中に入ると提供時間が余計延びる」(現役のFC社員)。

仕入れ段階での原価率は突出して高い訳ではないが、「店内で調理するのでその従業員の力量によって、ロスが増減する」(同FC社員)。注文を受けてから、商品を提供するまでに平均で12分ほどかかり、外食業界では異例ともいえる長さだ。”行き過ぎ”ともいえる店内調理によって、大量のコストがかかっているのが現状だ。

こうした複雑な店内作業が必要な業態の場合、自社の直営で運営し、本部のスタッフが徹底的に指導したり、研修を増やしてノウハウを習得させる必要がある。にもかかわらず、大戸屋の国内店舗は現在、半分以上がFC店となっている。かつて、大戸屋HDの幹部は「直営で社員だからこそモチベーションが向上し高いサービスが維持できる。FC化後も同じ水準を維持できるのか」と不安を漏らしていた。

現在、大戸屋の1店舗あたりの平均年商は推計で1億円前後ほど。だが、FC店はロイヤリティ、販売手数料、システム利用料など含めて、売上高の約7%を本部に支払う必要がある。本部ですら儲からないのに、FCの収益性はもっと低い。「改装費用をかけたり、新たに出店しようというFCオーナーは少ないのではないか」(大戸屋関係者)

会社が公表した中計の説明会で、最大の課題であるオペレーションについて、窪田社長は「店内調理はわれわれの根幹、それを崩すわけにはいかない」と見直しは避ける方針を示した。その代わりに「フロア作業の簡素化のために、タッチパネル導入などのテストを行っている」(窪田社長)という。だが、前出のFC社員は、「まずはランチのメニューを絞り込むなど、抜本的なオペレーションの改革が必要だ」と指摘する。

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