何気ない株取引でも抵触! インサイダー取引に要注意

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 東京証券取引所をはじめ各証券取引所は、上場会社に対して、インサイダー取引を未然に防止するための社内体制の整備を求めている。だが、早稲田大学大学院の黒沼悦郎教授は「証券会社や銀行のような金融機関に比べ、一般の事業会社の場合は、内部者取引に関するルールの整備が不十分な企業も少なくない」と指摘する。

たとえば、3人の職員がインサイダー取引で摘発されたNHKは、不祥事発覚前まで「得た情報を自分の利益のために使ってはならない」という規定以外には、インサイダー取引の禁止など職員の株取引に関する社内ルールがまったく存在していなかった。

社内規定なかったNHK 罪の意識の欠如が根底に

NHKの事件について全容解明を進めていた外部識者による第三者委員会は、NHK職員の株取引についてのずさんな実態を暴き出した。同委員会が5月27日に発表した調査報告書によれば、過去3年間で職員ら81人が休憩中も含む勤務時間に株取引をしていたという。報告書はインサイダー取引はなかったとしているが、報道人としての倫理観や職業意識に欠けた行為といえ、NHKの信頼はまたも傷ついた。

「インサイダー取引は市場参加者すべてをだます詐欺行為の割に、その悪質さが世間一般にはあまり認識されていない」と、中央大学法科大学院教授の野村修也弁護士は憂慮する。「不正な取引で儲けた人がいる一方で、必ず損している人がいるのに、その被害者がわかりにくいからだ」(野村弁護士)。止まらない不正行為を生んでいるのは、罪の意識の欠如というワケである。

しかし、社会をだます卑劣な行為への制裁は厳しくなっている。金融庁は今年3月、インサイダー取引を認めたNHK記者ら3人に計49万円の課徴金納付命令を出した。金額自体はさほど大きくないが、NHKは事件を起こした3人を懲戒解雇。一部新聞等で実名報道された。

インサイダー取引で摘発されれば、不正取引で得た利益はすべて取り上げられる。それだけではない。懲戒解雇などで社会的地位も失うことになる。社内ルールのあるなしにかかわらず、ビジネスマンにとっては要注意だ。

「おかしな取引は見る人が見ればわかる」

証券取引等監視委員会の幹部が自信を持つ監視網をかいくぐってまで、不正行為に手を染めるメリットはない。
(週刊東洋経済編集部)

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