よいゾンビ企業と悪いゾンビ企業

ド直球で企業再生を考える

実際、普段の仕事でもそうですしメディアに触れてもそうですが、倒産の危機にあった企業が健全な状態に戻ることは確かにあります。「V字回復」という単語を新聞紙上で目にするのは、それほど珍しいことではありません。それはどういう意味なのでしょうか。

私は一般に言われるV字回復のパターンは、厳密には会社のライフステージを「引き戻す」ものではなく、今いるステージを「引き延ばす」ものだと思います。

需要の大小より、需要の深さ

こういう話をしていると、そもそもそういう企業を再生させる意味などあるのかという議論が必ず出てきます。

具体的な批判としてまずあるのは、個別企業が淘汰されても、本当に必要な商品やサービスであれば、必ず代替が出てくる、だから市場メカニズムに任せておけばよいという議論です。理屈の上ではもっともな気もしますが、地方で企業再生に従事している経験からすると、超マクロでは適正化されるのでしょうが、特定地域の企業単位というレベルで適正化されるわけではありません。とても時間もかかります。

大体、明日いきなりバスがなくなって、その地域に新しいバス会社が参入してくるまでに、免許の問題、車両の問題、バスルートの問題、人員の問題、膨大な作業と時間と意思決定が必要となります。その解消にどれだけ時間がかかるのか。

また競争原理は、需給バランスが不均衡であり、それが適正化に進むことが前提ですが、そもそも地方で起こっている問題はそれ以前の話で、需要の大小というより需要の深さです。たとえば、地方でバスに乗る人は子供や高齢者などの交通弱者が中心で、移動手段がなかったらどこにも行けなくなります。バスに乗っている人はわずかでも、そのサービスの有無はその人たちの死活問題です。

一方で自宅と職場に駐車場があり自家用車で通勤している人は、どんなにダイヤが充実していても料金が安くても(極端にいえば無料であっても)、バスには乗りません。すなわち価格メカニズムも働きにくい状況にあります。

よくあるのは、そういう競争原理も価格メカニズムも働かないのなら、公共サービスにすればよいという議論です。それができれば苦労はないのですが、現実にはやはり行政の予算や時間軸の関係で、いずれにしてもすぐに解決できるものでもありません。これも時間のかかる話です。

多少愚痴っぽくなりましたが、いずれにしても私の些細な経験からでも、淘汰に代表される市場原理が働きにくく、それでも再生の必要性がある業界や企業というのは存在します。

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