残業規制へ労基法改正案を国会提出か 2017年中に国会提出の公算

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 11月7日、政府は、時間外労働時間の規制があいまいな現行の労働基準法を改正し、2017年中に改正法案を国会に提出する方向だ。2013年7月撮影(2016年 ロイター/Toru Hanai)

[東京 7日 ロイター] - 政府は、時間外労働時間の規制があいまいな現行の労働基準法を改正し、2017年中に改正法案を国会に提出する方向だ。複数の関係筋が明らかにした。具体的には労働基準法36条もしくは関連法案を改正し、月間45時間ないし80時間の上限を明記する公算が大きい。

また、現行法では残業規制の例外職種となっている運転手や建設労働者にも、残業上限を適用することも検討している。

複数の関係筋によると、政府の働き方改革実現会議で来年3月末までに取りまとめる「働き方改革実行計画」の中で、残業時間の上限について、具体的な内容を盛り込む方向で議論する。労働基準法改正案は、同実行計画に盛り込まれる内容が「基礎」になるという。

同会議は、安倍晋三首相が議長となり、8人の閣僚が参加。さらに榊原定征・経団連会長、神津里季生・連合会長の労使代表、学識経験者ら15人が加わっている。

実行計画では、過労死の原因と指摘されている長時間労働を規制するため、時間外労働の上限を明記するのか、明記する場合は上限をどの水準に設定するのかが、最大の焦点になるとみられている。

現行法では、労働基準法36条に基づく労使間の協定(通称:36協定)を締結すれば、週40時間の法定労働時間を超えて、企業が雇用者を労働させることができる。その延長限度は、大臣告示で1カ月45時間・年間360時間となっている。

しかし、特別の事情が生じた場合にさらに延長できる「特別条項付き36協定」を結んだ場合、事実上、制限のない「青天井」の時間外勤務を課せられるケースもあるとの指摘があり、その点が制度見直しの最大のポイントとなっている。

関係筋によると、連合は月45時間の上限を基準にどこまで譲れるか、交渉次第とする姿勢を示す見通し。

経団連は「過労死基準」と呼ばれる月80時間や、割増賃金が上がる60時間などを基準として連合との間で歩み寄りを探る。

さらに運転手や建設労働者など現行法で規制の例外業務となっている職種にも、経団連、連合の両者で適用を検討する。

このほか、法律に違反した場合に適用される罰則(現行:罰金30万円あるいは6カ月以下の懲役)規定を強化することなども検討対象になる見通し。

安倍首相は9月27日の「働き方改革実現会議」で、来年3月まで「働き方改革実行計画」をまとめるよう指示。その中で「具体的な実行計画」という表現を用い、「大切なのはスピードと実行。先送りは許されない」といった強い表現も使って、「36協定」に関する法令の見直しへ強い決意を示した。

また、電通<4324.T>で過労死事件が発生し、政府関係者の間では「時間外労働の規制議論はここへきて、より厳しい空気となっている」との受け止め方が浮上。

複数の関係筋は、労働基準法36条とその関連法案だけの見直しならば、来年6月末までの通常国会にか、同年中の臨時国会のどちらかに改正案を国会提出することは可能との見通しを示している。

今回の法改正問題について、厚生労働省は「36条改正について、具体的な法案提出時期のメドは決まってはいない。できるだけ早期に提出したい」(労働基準局)とコメントしている。

 

(中川泉 編集:田巻一彦)

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