しかし、一方で、米国の株価水準はやや高すぎる嫌いはあるので、警戒は必要だ。金融政策の転換が明らかになり、下落へと転じれば、かなり大きな下落となるだろう。そして、それは日本だけでなく、世界的な下落であり、新興国通貨の下落にも現れているように、それほど遠くないと考えられる。
したがって、今回はそれが起こらないうちに、相場とは関係ない、実体の話を少ししておくことにしよう。落ち着いて休息できるうちに。
成長戦略に関する「2つの誤解」
安倍政権によって打ち出された成長戦略に対して失望が広がり、株価は下落し、メディアや有識者は批判を強めている。株価が暴落したのは、成長戦略を材料として利用しただけなのだが、メディアや有識者はどうも誤解しているようだ。
彼らは2つの誤りを犯している。第一の誤りは、官僚が作った成長戦略では駄目だ、という批判であり、もう一つは、日本経済は成長戦略にかかっているという信念である。
第一に、成長戦略は官僚しか作れないのである。成長戦略は、政権与党によって作られる。政権を握っているのだから、成長戦略は実行される。実行されるのであれば、実現可能なものでなければならない。
実現可能なものであれば、政権を支えている企業や団体などの利害関係者は黙っていない。だから、彼らの意向を踏まえたものになる。政権あるいは首相の考えを反映し、利害関係者も承認する成長戦略を立案するのは、並大抵のことではない。数多くの制約条件の下で、首相の最適化問題を解かなくてはいけないのだ。それが出来るのは官僚しかいない。
「退屈な成長戦略」は、官僚と無関係
したがって、結果として出てくる成長戦略が退屈なのは、官僚のせいではない。官僚は優秀な頭脳で、難問を解いただけで、その難問を設定したのは、首相とそれを支える与党なのだ。官僚は優秀だが、それ以上でもそれ以下でもない。権力を持っているのは内閣であり、それを支えるのは与党と与党を支える利害関係者なのだ。
この構造を理解せずに、美しい成長戦略を描く、シンクタンクや学者は、阿呆というよりは世間知らずだ。彼らの作った成長戦略は絵に描いた餅だ。
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