アメリカ「大麻合法化」は大統領選で加速する カリフォルニアなどが合法化に向け住民投票

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たとえば、ニューヨーク大学のランゴーン医療センターは、213人の患者を対象とした研究の結果、大麻由来の治療薬によって、てんかんの発作が起きる頻度を下げられる可能性があると発表。また、米国立がん研究所(NCI)も、大麻に含まれる成分が、特定のがん細胞を死滅させる効果があることが動物実験でわかったとする研究を公表した。

もっとも、「どうやら医療効果はあるらしい」という世論の理解を後押ししているのは、こうした研究ではなく、ヒューマン・ストーリーだ。たとえばジョージア州では、ハレイ・コックスという5歳のてんかん持ちの女の子の例に基づいて、「ハレイの希望」と銘打った法案を提出し、通常の薬への抵抗力が強いてんかんの患者がTHC(大麻に含まれる高揚感を誘引する成分)を使用することを合法化した。多くの州では、大麻の医療利用を合法化する法案に「Compassion(思いやり)」という言葉が使われているのも興味深い。

コロラド州では「大麻観光」が大盛況

ただ、連邦レベルでは違法であることから、臨床実験を行うのに超えなければならないハードルは高い。また、長期的な大麻利用の影響などについてはまだ十分に研究が進んでいないなど、リスクを指摘する向きが少なくないのも事実だ。

それでも、ここへきて完全合法化を目指す州は増えており、今回の選挙でもアリゾナ州、カリフォルニア州、メイン州、マサチューセッツ州、ネバダ州が、嗜好品としての利用の是非を住民に問うことになっている。多くの州が全面解禁を目指す背景には、タバコやアルコールと同じように、大麻に課税することで税収を拡大したいとの思惑があるほか、先に全面解禁に踏み切ったコロラド州などで大きな経済効果が出ていることがある。

実際、学校を建設するための「ビルディング・エクセレント・スクール・トゥデイ基金」に、税収から4000万ドルを寄付することを条件に完全解禁を可決したコロラド州は、解禁1年目(2014年6月~2015年5月)には7800万ドル、翌年には1億2900万ドルといずれも当初の計画を超える税収を確保。また、米国内外から同州を訪れる人も急増しており、「大麻観光」も盛り上がりを見せている。大麻観光がけん引し、2015年には過去最高の7700万人がコロラド州を訪問し、191億ドルが同州で使われている。

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